III-1.「国家形成と地域社会──カンボジア官報を利用した総合的研究」(平成22年度 FY2010 新規)


  • 研究代表者:笹川秀夫(立命館アジア太平洋大学・アジア太平洋学部)
  • 共同研究者:高橋美和(愛国学園大学・人間文化学部)
  • 高橋宏明(東海大学・教養学部国際学科)
  • 北川香子(東京大学・大学院人文社会系研究科)
  • 矢倉研二郎(阪南大学・経済学部)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア研究所)
  • 山田裕史(上智大学・アジア文化研究所)
  • 傘谷祐之(名古屋大学・大学院法学研究科)

研究概要

カンボジアの官報は、各種法令や人事異動を定期的に編集したもので、カンボジア近現代史研究の重要資料である。京都大学東南アジア研究所は、すでに1985 年以降のクメール語版官報を所蔵している。本研究は、マイクロフィルム化が完了しているフランス語版官報(1904-1915 年、1945-1973 年分)をカンボジア国立公文書館から購入し、各時代の官報の分析とフィールド調査の知見を統合することで、同国における国家形成の過程と地域社会の変容を解明する。

詳細

本研究は、カンボジアの官報を利用した文献研究と、すでにフィールド調査を行っている社会科学者の知見を統合することで、カンボジアにおける近代国家形成の過程と、そうした過程が地域社会の人びとの生活をいかに変えてきたのかという問題を、長期的な時間軸のもとで検証する。

本研究の意義としては、研究資料の整備と、地域研究の方法論の発展という二点があげられる。研究資料の整備という点では、すでに1985 年以降のクメール語版官報を収蔵する東南アジア研究所が、カンボジアのみならず東南アジア諸国の国家形成の過程や、フランス植民地支配の実態を比較研究するうえでも欠かすことができない官報資料を、網羅的に所蔵することが重要であると考える。一方、本研究は、近年著しい発達をみせている地域情報学の知見を取り入れ、研究成果の検討と公開という具体的な内容の部分でも、文献研究と社会調査の成果の融合をはかることを射程に入れている。

期待される成果としては、カンボジアの官報という未開拓の資料にもとづく独創的な論文をメンバーが発表していくことが期待される。さらに、ポル・ポト政権による断絶を経て、二度にわたる国家形成と地域社会の変容を経験したカンボジアを事例とすることで、現代社会の成り立ちを新たな視点から再考し、東南アジア地域研究を更新することが可能になると考えられる。

 


ポーロッカラーム寺(コンポン・チナン州コンポン・トロラーチ郡)の壁画、1925年

プノンペン、カンボジア国立公文書館