VI-3.「インドネシア・ジャワにおけるケア倫理の探求:ローカル・エシックスの民族誌」(平成26年度 FY2014 新規)


  • 研究代表者:合地幸子(東京外国語大学・大学院総合国際学研究科)

研究概要

本研究の目的は、インドネシア、ジャワ農村部の高齢者に関する、ケアのローカル・エシックスを探究することである。対人コミュニケーションの日々の実践を通して、ケア・エシックスがどのように構築されるのかについて、文献研究を行う。東南アジアのローカルな文脈における、高齢者へのケアの多様性とその広がりに関する研究は、十分に行われてこなかった。本研究は、社会のある種の「親密圏」における、ローカル・エシックスの生成とケア実践の関係について明らかにする。

詳細

本研究は、インドネシア・ジャワのイスラーム村落部を中心とした高齢者ケアの実践に関する、ケアの倫理的規範を明らかにすることを目的とする。

現在インドネシアが直面している人口高齢化に伴う高齢者問題に対して、現地の人びとが今後どのように環境を整えるかは、地域的特徴を反映した文化的パターンに見られるケアの倫理に大きく依存していることが推測される。とりわけ、ジャワにおける過疎化している村落地域では、都市化あるいは産業化の影響を受けながらも、このようなケアのエトスが色濃く残っており、人びとの相互の社会関係の紐帯は強い。高齢者ケアの概念は、その意味でも、人びとのこれまでの生活に見られてきた現象であることが想定される。

本研究期間には、史資料を多角的に活用し、ケアのエトス(人びとの文化における道徳的側面)および生活の基調、性格、質、人びとが求める審美的なスタイルを明らかにしていきたい。

高齢者ケア研究は、急速な高齢化への対応策として西洋的な見方による政策提言型の研究が多くを占めてきた。これに対して本研究は、ローカルな視点を通してケアの倫理的規範を明らかにすることが特徴であり、広く東南アジアにおける高齢者ケアの実践と相対化できることが期待される。また、健康観や病気観、ケアの倫理と宗教の関係から死生観を明らかにできるものと考える。なお、本研究の成果は、現在準備中の博士論文執筆に反映される。


高齢者と会話をする村落の住民

高齢者と子供たち