I-4.「地域統合時代のヴィザ制度の戦略的活用:タイにおける人口移動管理政策をめぐる政治分析」(平成27年度 FY2015 新規)


  • 研究代表者:相沢伸広(九州大学・比較社会文化研究院)
  • 共同研究者:Pukchanok Pattanatabut(国際移住機関)
  • 中西嘉宏(京都大学・東南アジア研究所)
  • Virot Ali(タマサート大学・政治学部)
  • Pitch Pongsawat(チュラロンコン大学・政治学部)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア研究所)

研究概要

本共同研究では、タイのヴィザ政策をめぐる政治過程を明らかにする。第 1 に、各省庁および、各政党、業界団体、地方自治体のヴィザ制度の変更にかかる意見の異同を整理する。第 2に、近隣国、および、投資、観光、国際的な制度設計の面で重要な力をもつ中国、日本、欧州との関係におけるヴィザ制度変更の政治的背景を分析する。H28 年度、バンコク連絡事務所にて上記課題にかかる聞き取り調査、資料収集および専門家との研究会を集中的に行う。

研究目的

経済のグローバル化、地域化の時代において、外国人労働者、観光消費、外国投資に大きく依存する国家の政府は、国家の浮沈と自らの政権維持を賭して、外国人の出入国ルールの調整に腐心する。現代国家が有する最大の調整手段は国籍法の変更であるが、より柔軟かつ頻繁に用いられる調整手段はヴィザ制度の変革である。タイ政府にとって大陸東南アジアにおける人口移動のハブとしての地位を確立する、また、クーデタ後の政権安定のため、外国人観光客収入の向上を通じて支持を調達する、といった政治目的を達成するために、ヴィザ制度は重要な政策ツールである。今後も、中国の台頭に伴うアジアの地域構造の変化、東南アジアの経済的地域統合の深化により人の移動の方法や理由に変化が予見される中で、ヴィザ制度の運用は地域秩序を決する要因となり、それだけに国内、隣国間、そしてグローバルな政治対立を容易に生む問題となる。本研究はこの点を理解するためにタイのヴィザ制度をめぐる政治過程を明らかにすることを目的とする。

意義

第1に、タイのように多くの国民を抱えつつも外国人労働者、観光消費、外国投資に経済を大きく依存する国における、人口管理をめぐる合意形成を行う上での現代的な課題や要点を明らかにする。これは人口管理が国民管理とほぼ同一であった時代とは異なる政治的特徴を明らかにするものである。第2に、歴史学、社会学、人類学そして経済学が人の移動、定着ついて数多くの研究を蓄積してきたのに比べ、政治学の当該テーマについての研究は遅れている。本研究は、その遅れを取り返す。

期待される成果

タイの各種ヴィザ制度をめぐる合意形成、政治対立の特徴を明らかにする論文が成果として提出される。


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