VI-1.「文化結合症候群アモックの歴史的変遷についての文献的研究」(平成27年度 FY2015 新規)


  • 研究代表者:今井必生(医療法人 三家クリニック)

研究概要

時代とともに疾患概念は変遷する。アモックは突然の暴力行為を特徴とする現象であり、1430 年に初めて文献に記載された。精神医学では文化結合症候群として記述されている。しかし、アモックの定義、像や想定される原因も時代とともに変化してきた。この研究ではアモックの疾患概念の変遷に何が関わっているのかを調べるために、これまでの文献をレビューするとともに、当時の主な社会的出来事や医学進歩との関連を考察する。

詳細

疾患概念の変遷が何によって誰のために起こるのかを、アモックを題材に明らかにすることが本研究の目的である。

アモックを検討する利点は、他の疾患と異なり、様々な視点から記述されている可能性が高い点である。アモックは、インド、マレーシア、インドネシアを中心に認められ、その他の地域ではほぼ認められないとされている。これらの地域は多民族、多宗教が存在し、欧州の植民地支配を経験した。従って、多様な角度からの文献が存在することが考えられる。さらに、地域が限定されているため、歴史的な出来事との関連を考察しやすいとも想定している。

また、記述者により疾患概念が異なることも考えられる。この違いを比較することにより、疾患概念が誰に、どのような目的で利用されてきたのかを考察する。

これらの結果を土台に、現代の疾患概念が誰にどのような利益をもたらしているかを考え、その存在理由を考察する。疾患概念の存在理由を明らかにできれば、人間の健康や幸福のために疾患概念がどのような部分で貢献できるのか、貢献できないのか、を検討することができる。さらには、疾患概念の活用・改善方法や、その他の介入方法を検討することができる。


インドネシアパプア州でのインタビュー

インドネシアパプア州バデの様子