VI-3.「地形図から読み解くスマトラ島中北部の土地利用変化」(平成27年度 FY2015 新規)


  • 研究代表者:小泉佑介(東京大学・大学院総合文化研究科)

研究概要

近年、インドネシアのスマトラ島では企業によるアブラヤシ農園の開拓が進められており、労働環境や環境破壊などの深刻な課題を抱えている。その一方で、小農によるアブラヤシ栽培も急速に拡大しており、農村内部における適応的な変化も見逃すことができない。本研究では、こうしたスマトラ島における農村社会構造の変化に対して、地形図やセンサスデータを用いることにより、同地における土地利用の変化を理解する。

詳細

現在、スマトラ島中部のリアウ州は、企業農園だけでなく、小農によるアブラヤシ栽培が最も拡大している。本研究では、北スマトラ州との境界に位置し、バタック人の移住が最も多いとされているリアウ州のロカン・ヒリル県を研究対象地域として設定する。そして、東南アジア研究所の図書館が保有する地形図やセンサスデータをもとに、1980年代から現在に至るまでの新規開拓農村の形成パターンや生業の変化、村レベルでの人口動態・民族構成を、地理情報システム(GIS)を用いて分析することを目的とする。

また、東南アジアにおける土地利用の変化に関するこれまでの研究は、衛星画像を利用したリモートセンシングによる分析が主であった。それに対して、本研究は地形図を利用するため、植生分布や集水域といった自然環境の変化だけでなく、宗教施設や村道などの関係性を把握することで、人々の生活圏などを推定することも可能であると考える。このように、地形図やセンサスデータを通じて、対象地域の中期的な社会変化を空間的に捉えることが、本研究の特徴である。

本研究の結果として、対象地域であるロカン・ヒリル県の1980年代と2000年代の地形図(1:50,000)を用いることで、農園開発地域の周辺における住民の栽培作物の変化や、新規集落の形成パターンを明らかにすることが期待できる。また、2000年のセンサスデータをもとにロカン・ヒリル県における人口や民族分布を示す主題図を作成し、地形図と重ね合わせた上で、北スマトラ州からの移民がどのような地域に集住しているのかを提示することができると考える。


1980 年代のリアウ州おける5 万分の1 地形図

リアウ州で急速に拡大するアブラヤシ農園