II-2.「東南アジア大陸部稲作圏における農業近代化以降の技術展開の国際比較」(平成28年度 FY2016 新規)


  • 研究代表者:浅田晴久(奈良女子大学・研究院人文科学系)
  • 共同研究者:柳澤雅之(京都大学・地域研究統合情報センター)
  •                      松田正彦(立命館大学・国際関係学部)
  •                      小林 知(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      Nathan Badenoch(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      小坂康之(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  •                      赤松芳郎(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      内田晴夫(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      安藤和雄(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      Guy Francois Trebuil(フランス国際農業開発研究センター・イノベーションミックスリサーチユニット)

研究概要

「緑の革命」というグローバリゼーション以降、東南アジア大陸部稲作圏で起きている農業技術変化を比較検討し、地域の固有性が技術発展とどのように関わり、またそれが今後の発展の土台としてどのように活きるのかを考察する。本共同研究では年3 回の研究会、Web サイト、メーリングリストによる議論などを共同研究の手段とし、課題名をタイトルとする編著の英文図書と、2017 年10月から2018 年3 月まで招へいされるDr. Guy Trebuil(CIRAD:Agricultural Research for Development、フランス)の単著、の2 つの著書の出版を最終目的とする。

詳細

東南アジア大陸稲作圏の国々では食糧自給をほぼ達成したことから、農業技術開発・普及および農村開発は、国家戦略では優先順位が下がっている。つまり政府による「技術の押し売り」的状況が改善し、近代農業技術の画一的な普及状況が一変した。国によっては農民の自発的な技術変革が顕著に見られるようになってきており、農業技術発展において各国の状況にはかなり大きな温度差が生じつつある。伝統農業時代に存在した、地域による多様性が再び出現しつつあると言えよう。また世界の農業技術が向かっている方向も、多収技術から持続性、安定性、安全性、低投入技術へと移り、脱化学農業の動きも活発である。この変化を国際的な比較を通じて整理し、地域発展の共時的現象として確認し、地域の固有性との関連で農業技術発展における意義を明らかにすることが本共同研究の目的である。

東南アジア大陸部では、地域の固有性に強く立脚した農業技術発展がその多様性を大きく開花させつつあると言えるが、この現象は現在までまとまった形で報告されていない。本共同研究は、その現象の実態と現代的意義を明らかにし、地域研究に携わる研究者コミュニティと東南アジアの人々とともに、将来の農業技術のあり方について考えるという大きな意義をもつ。そこからは、農業技術の変容には地域の固有性が強く働き、グローバル化や国家による上からの政策への一辺倒ではなく、農民の主体性に立脚した多様な発展のありかたが浮かび上がると期待できる。それは、市場経済のグローバリゼーションによる画一的な地域発展の弊害を克服していく、具体的なヒントを示すものとも期待できる。

 


牛に犂を引かせて田を耕す(インド・アッサム州)

乾季に地下水を汲み上げて稲を作る(インド・アッサム州)