III-2.「第二次世界大戦期以降のタイにおける地方紙資料の保存・利用環境の整備」(平成28年度 FY2016 新規)


  • 研究代表者:伊藤雄馬(富山国際大学・現代社会学部)
  • 共同研究者:小泉順子(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      櫻田智恵(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  •                      Nittayaphorn Prompanya(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  •                      Villa Vilaithong(チュラーロンコーン大学・文学部)
  •                      Sing Suwannakij(チェンマイ大学・人文学部)

研究概要

現在タイでは、日刊の全国紙だけでも20 タイトル以上が発行されており、タイ国内外の研究機関において、刊行年が長いものを中心に積極的に収集が行われている。一方、地方紙は、正確なタイトルや発行状況、発行者などの基礎的情報さえ不明確で、保存・収集もほとんど行われていない。こうした状況は、地方紙を研究に利用する上で、大きな弊害となってきた。

そこで本研究では、以下の3 点を行う。
1) タイの地方紙に関する基礎情報を網羅的に収集し、基本リスト・書誌データを作成する。
2) 作成した情報に基づき、刊行期間の長い代表的な地方紙を選択し、マイクロフィルム複製を作成し収集する。事例としてチェンマイ県を選択する。
3)招来した地方紙の記事を分析し、1950 年代末-1980 年代初頭のチェンマイ県における政治・経済・文化状況を、特に王制にかかわる出来事と言説に焦点を当てて明らかにする。

本研究の目的

①地方紙のリスト・書誌データを作成し、全国の地方紙の刊行状況を整理・把握する。
②チェンマイ県を事例とし、全国紙と地方紙の記事内容を比較する。
③これまで日本の学術機関において収集されていないタイ地方紙の複製を作成し、東南アジア研究所図書室に招聘することで、地方紙の研究利用の機会を提供することを目指す。

意義

タイの各地域の政治文化を理解する上で、地方紙分析が有用だという指摘は、先行研究にも見られる。しかし、地方紙に関する基礎情報が集約されていないこと、及び収集場所が不明であるため、地方紙の研究利用はすすんでいない。本研究では地方紙リスト・書誌データを作成し、これを開示し、地方紙の研究利用を促進する。

また、地方紙と全国紙の記事の比較からタイ社会の地方差や多面性を描き出そうという新しい試みを提起する。

期待される効果

これまで、首都バンコクで刊行されたものに偏重してきた日本国内で所蔵される史資料に、地方紙を加えることで、東南アジア研究所がタイ研究の拠点として更に発展することに寄与する。

また、商業ベースに乗りにくいために消失や劣化が進む地方紙等の貴重資料を、長期的に収集・保存することを通し、複数の視点からタイ社会を問い直す多様な研究の登場を促進する。

 


チェンマイ大学副学部長、ロム・チラーヌックロム准教授に面会
チェンマイ大学中央図書館にて作業