IV-10.「東南アジアにおけるコミュニティ・ポリシング─治安改善および警察改革へのインパクトの検討─」(平成28年度 FY2016 新規)


  • 研究代表者:木場紗綾(同志社大学・政策学部)
  • 共同研究者:岡本正明(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      本名 純(立命館大学・国際関係学部)
  •                      安富 淳(平和・安全保障研究所)
  •                      田中智仁(仙台大学・体育学部)
  •                      Mario Joyo Aguja(ミンダナオ州立大学・社会学部)
  •                      Janjira Sombatpoonsiri(タマサート大学・政治学部)

研究概要

本研究では、警察改革の一分野である「コミュニティ・ポリシング」(警察と住民の参加協働によって地域内の諸問題の解決を図ることによる治安改善活動)を実施してきた東南アジアの複数の国々において、1)その帰結として地域の治安はどの程度改善されたのか、また、警察改革はどの程度実現したのか、2)各国によって改善・改革の度合いが異なる要因は何か、という2 つの問いを設定し、比較研究を実施する。インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア、ミャンマーの5 カ国を対象とし、それぞれの国を専門とする研究者の間で研究会を開催する。また、将来的には現地の実務者らとの共同現地調査を視野に入れる。

詳細

本研究は、西欧がインドネシア、フィリピン、タイ、マレーシアといった東南アジアの新興民主主義国に対して実施してきたコミュニティ・ポリシングが、地域の治安改善および警察の体質改善に与えた効果とその要因を分析する。民主化当初、セキュリティ・ガバナンスに多くの問題を抱えていた上記の国々に対し、西欧の援助機関や政治団体、NGO は、過去20 年以上にわたり、警察とコミュニティ住民が対立するのではなく、協働によって居住地域の治安改善に向けて協力を行うコミュニティ・ポリシングのプロジェクトを実施してきた。従来、東南アジアで警察改革が進展しない要因として、1)警察の不明確なマンデートや汚職といった法的側面、2)警察内部の機構や訓練、分権化といった制度的側面、3)私兵や武装グループ、プライベート・セキュリティ企業の存在といった社会的側面、4)支援プロジェクト自体の制度設計の問題、など、それぞれの側面から個別の研究が行われてきた。しかし、複数の国を比較し、上記のような複合的な観点を包括的に捉えて警察改革の成功要件を探る先行研究はほとんどない。そこで本研究では、1)コミュニティ・ポリシングによって期待される治安改善と警察改革という成果はそれぞれ、各国でどの程度達成されたのか、2)各国によって達成の度合いが異なる要因は何か、という2 つの問いを設定し、比較研究を実施する。

新興民主主義国における警察改革の成功メカニズムの解明は、当事国のみならず、日本を含む全世界にとって普遍的な民主化の課題である。西欧からのコミュニティ・ポリシングはどのような条件において効果を上げたのか。ドナーらは過去20 年間の成果をどう分析し、支援のパッケージを発展的に変化させてきたのか。それらを明らかにすることは、新興民主主義国の民主化の安定に重要な役割を果たしうる日本の政府および非政府組織の今後の方針への知見としても重要である。

 


平成28 年5 月22 日研究会ミンダナオ州立大学Mario Aguja 准教授を招いて。

平成28 年5 月22 日研究会ミンダナオ州立大学Mario Aguja 准教授を招いて。