IV-18.「東南アジアにおける「応答性の政治」」(平成28年度 FY2016 新規)


  • 研究代表者:見市 建(岩手県立大学・総合政策学部)
  • 共同研究者:本名 純(立命館大学・国際関係学部)
  •                      岡本正明(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      日下 渉(名古屋大学・国際開発研究科)
  •                      中西嘉宏(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      瀬戸裕之(名古屋大学・法学研究科)
  •                      木場紗綾(同志社大学・政策学部)
  •                      外山文子(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      伊賀 司(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      茅根由佳(京都大学・東南アジア研究所)

研究概要

本研究は東南アジア7 カ国における、アカウンタビリティ改革やポピュリズムの台頭といった応答性をめぐる政治の因果関係を解明し、東南アジア政治研究における理論構築を行おうとするものである。年2 度の研究会で集中的な討議を行い、各国の政治あるいは国際協力分野の専門家である参加研究者が提示する事例を持ち寄り、また地域を超えた比較政治の事例や理論的発展を参加研究者で共有し、近い将来に国際共同プロジェクトを形成する。

詳細

東南アジアには異なる民主化段階にある国々が混在しているが、民主化が定着した国のみならず、(半)権威主義国家においてもさまざまな分野におけるアカウンタビリティ改革が行われ、政府が情報開示を通して、政策決定および帰結に関して市民に応答する責任を負うこと(応答性)が求められている。他方で、議会を迂回して有権者に直接応答する政治指導者(ポピュリスト)が中央・地方を問わず登場している。ではなぜ同時期に応答性を高める制度改革が行われ、それはそれぞれの国内政治にどのような帰結をもたらしているのだろうか。ポピュリストの登場は民主化にどのような影響を与えているのであろうか。本研究課題では、東南アジア7 カ国の比較に基づいた実践的かつ実証的な分析を行うことで、「応答性の政治」をめぐる因果関係の解明、東南アジア政治研究における理論的貢献を目指すものである。

民主化研究の主たる関心は民主主義への移行と定着から、政治腐敗や汚職の撲滅、公共サービスの効率化といった民主主義の「質」の向上に至り、アカウンタビリティ改革はその手段として注目を集めている。他方、ポピュリズムの台頭は近年のタイやインドネシアから、2016 年のアメリカ大統領選挙まで広範な現象である。こうした諸現象を、応答性に注目して理論構築を目指す本研究は、東南アジア諸国の政治研究はもちろん、先進民主主義国の課題にも応えうる発展が見込まれる。

これまでおおよそ個別の国の個別の事例についてのみ蓄積されてきた政治研究を、比較の観点から行う点で、東南アジア政治研究における理論的発展が見込まれる。とくにインドネシアなどにおけるエリート支配の継続を強調するオリガーキー論に対しては、有力な代替的理論枠組みを提示することが期待できる。また民主化への移行や定着を扱う民主主義研究における貢献をもたらすことが可能である。「揺れながら疾走する(Careening)」民主主義と称されるタイや半権威主義のマレーシアにおける「応答性の政治」の因果関係の解明は、同時に民主化の停滞の原因を明らかにすることになる。

 


汚職の撲滅と大衆の声の反映を訴えるグラフィティとポスター(インドネシア・ジョグジャカルタ)

礼儀正しいポピュリスト政治家、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領