IV-1.「インドネシア・パプア州における神経難病の時代的な環境変化と老化に伴う変遷」(平成28年度 FY2016)


  • 研究代表者:奥宮清人(京都大学・東南アジア研究所)
  • 共同研究者:葛原茂樹(鈴鹿医療科学大学・保健衛生学部)
  •                      小久保康昌(三重大学・大学院 地域イノベーション学研究科)
  •                      Eva Garcia del Saz(高知大学・国際連携推進センター)
  •                      松林公蔵(京都大学・東南アジア研究所・名誉教授)
  •                      藤澤道子(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      平田 温(吉田病院・附属脳血管研究所・悩神経内科)

研究概要

インドネシア・パプア州(西ニューギニア)は、グアム島や日本の紀伊半島とならんで、筋萎縮性側索硬化症(ALS)とパーキンソン症候群が多発する世界3 大地域のひとつである。同地域の現地研究者と協力し、神経難病の病型や予後の縦断的な変化と、環境変化との関連、および老化の影響を調査することにより、病因に寄与する環境要因を研究する。

詳細

インドネシア、パプア州では、神経変性疾患が通常の100 倍以上の頻度で多発することが報告された(1970 年代)が、その後、十分な調査がなされていなかった。一方、多発地域のひとつであったグアムでは、生活様式の近代化と高齢化とともに、1980 年代にALS の急激な減少とともにパーキンソン症候群の占める割合の増加が報告された。パプア州においても、一部の研究者によりALSの消失の可能性が報告されたが、我々の最近の調査により、現在でもALS とパーキンソン症候群が多発していた。しかし、パプア州においても、生活の近代化や高齢化が進みつつあり、ALS が減少しつつある。時代的な環境変化に伴うALS とパーキンソン症候群の病型の変遷を調査し、病因に寄与する環境要因と老化の影響を明らかにすることが目的である。

土壌や飲料水中の金属、そてつの実の神経毒や、一部の遺伝子が病因に関与するという仮説があるが、現在まだ確証はない。パプア州の症例は、紀伊やグアムに本来多発していたALS/パーキンソン/認知症複合と酷似しており、同一疾患である可能性が高い。パプアは、現在でもALS とパーキンソン症候群が多発している点が世界の多発地域の中でも特異的であり、縦断的に環境変化と病型の変遷を調査することにより、病因に迫ろうとする意義は大きい。

横断的、縦断的調査により、神経変性疾患の頻度とその推移を明らかにする。同一患者および家族内の患者において、継時的にALS、パーキンソン症候群、認知症の合併の詳細について明らかにする。ライフスタイルや生態学的な要因と、疾患や老化との関連を明らかにする。高齢者包括的機能検査、栄養調査とともに、飲料水や身体(毛髪等)の金属分析を実施し、環境変化にともなう、病態の変遷や予後を縦断的に追求することにより、病因に迫ることが期待される。

 


神経症例の診察風景(Bde 診療所、2016 年3 月)

パーキンソン症例の家庭訪問(Ia 河流域、2016 年3 月)