IV-6.「東南アジアにおけるグローバル都市のダイナミクスと階層構造」(平成27-28年度 FY2015-2016 継続)


  • 研究代表者:遠藤 環(埼玉大学・経済学部)
  • 共同研究者:岡本正明(京都大学・東南アジア研究所)
  •                      大泉啓一郎(日本総合研究所・調査部)
  •                      後藤健太(関西大学・経済学部)
  •                      相沢伸広(九州大学・比較社会文化研究院)
  •                      日下 渉(名古屋大学・大学院国際開発研究科)
  •                      河野元子(政策研究大学院大学・政策研究科)

研究概要

本研究は、主に東南アジアのグローバル都市に注目し、現代の都市のダイナミズム、内部構造と階層性を理論的、実証的に明らかにするためのフレームワークを検討し、新たな都市論の可能性を模索する。グローバル化の下、圧縮した変化が進み、重層的な階層構造を見せる東南アジアの都市(バンコク、ジャカルタ、クアラルンプール、マニラなど)をフィールドにし、地域研究、経済学、政治学等を専門とする若手研究者による議論の場を設け、共同研究に向けての可能性や具体的な計画を検討する。

詳細

世界の他地域と同様に、東南アジアでは急速な都市化が進んでいる。東南アジアのグローバル都市は、国際的分業の生産拠点、金融のハブとして中枢管理機能を担っており、都市間ネットワークはますます深化している。一方で、圧縮した変化の下、先進国型の課題と中所得国・発展途上国型の課題を同時に抱え込み、様々な都市問題にも直面している。その様相は、例えば1990 年代に出版された『アジアの大都市』シリーズが捉えた都市像からも大きく変化している。本研究会では、現代のグローバル都市を理論的、実証的に検証する準備段階として、先行研究のサーベイ、各分野をつなぐ学際的なアプローチの模索、実証研究の設計に向けての二次資料分析などを進める。初年度は主に関連する諸分野の先行研究を念頭におきながら、アジアのメガ都市の実態のフロンティアを理解することを中心に進めた。今年度は、1)各学問分野におけるメガ都市をめぐる議論の変遷と現在のレビュー、2)二次資料を用いた階層構造や開発プロジェクトに関する実態の検討、3)新たな都市論のフレームワークを模索への道筋を検討し、共同研究の設計、を中心に進めていく予定である(ドイツの研究者との合同研究会も開催予定)。

現代の都市の経済・社会の実態、つまり、各都市が担う経済的機能、創出される就業機会とその下での階層性や政治的対立の様相は、国内的要因のみならず、大きくはグローバルな経済や資本の動向にも規定されている。都市の理論的・実証的な比較研究は、各都市の内部構造の理解に寄与するだけでなく、「国家」を単位としているだけでは分からない、東南アジアにおける地域研究の新しい視座を提供すると言える。本研究会の成果を受けて、研究会メンバーを中心に、アジアにおけるグローバル都市の比較研究のためのプロジェクトの準備を進め、将来的には外部資金に応募する。共同研究が実現した際には、アジアの都市間比較の研究成果を、和文、英文で発表していくことを目指したい。

 


屋台従事者(2005 年バンコク)

スモッグで霞む上海夜景(2011 年)