IV-9.「ニューギニア高地住民の生活様式の変化と動脈硬化に関する研究」(平成27-28年度 FY2015-2016 継続)


  • 研究代表者:藤澤道子(京都大学・東南アジア研究所)
  • 共同研究者:松林公蔵(京都大学・東南アジア研究所・名誉教授)
  •                      Garcia del Saz Eva(高知大学・国際連携推進センター)
  •                      石田明夫(琉球大学・大学院医学研究科)
  •                      Ida Bagus Manuaba Indrajaya(ワメナ総合病院)

研究概要

インドネシア・パプア州(旧イリアンジャヤ)ニューギニア高地住民は、最近まで独自の生活様式を堅持して生活してきた。しかし政府の移民政策以降、特に近年インドネシア他島からの移民が増加し、生活様式が変化しつつある。以前の生活様式と比較しながら、現在起こっている変化の経過観察を行うことで、健康との関連について検討する。具体的にはホームステイによる生活様式調査を行うとともに、医学的住民健診を行う。

詳細

動脈硬化は、虚血性心疾患・脳卒中など生活機能障害を引き起こす疾患の原因であり、加齢とともに進行する。急速に高齢化が進行中であるアジア諸国にとっても重要課題である。しかし、動脈硬化の成因については、まだ不明な点が多い。

通常の社会では、加齢とともに動脈硬化が進行し、血圧も上昇するが、インドネシア・ニューギニア高地に住む集団では加齢による血圧上昇がみられない(Hypertension Research 2012)。また、高血圧が、動脈硬化の危険因子の1 つであるとされるが、本集団では加齢による血圧上昇がみられないにもかかわらず、末梢の動脈壁の硬さに関連するとされる脈波速度検査では、血管壁が加齢とともに硬くなることが示された。動脈硬化の発生機序を明らかにすることで、予防策を講じることができれば、非常に意義のある研究となる。また本集団は、近代化による生活様式の変化が現在進行中であり、以前は極端に少なかったとされる塩分摂取量の増加、砂糖の利用により、今後糖尿病、高血圧などの生活習慣病が増加し、それにともなう動脈硬化性疾患の増加が懸念される。変化が進行中である現在におこなうことでも意義ある研究といえる。

動脈硬化の成因が明らかになることで、今後の予防に寄与することができる。また、この地域は結核などの感染症が問題であるにもかかわらず、病院受診せず、若くして死亡する住民も少なくないが、現地に近いワメナ総合病院との共同研究であり、この研究活動をとおして今後地域住民の健康向上が期待できる。

 


家族総出で畑仕事をおこなっている

小さな家を作って遊ぶ子どもたち