VI-1. 「仏領期インドシナにおける精神保健医療─カンボジアの視点から─」(平成28年度 FY2016)


  • 研究代表者:吉田尚史(早稲田大学・大学院文学研究科)

研究概要

申請者はこれまで、カンボジア国立公文書館にて閲読可能な「官報」「理事長官文書」等といった史資料を用いて、仏領期カンボジアにおける精神医学・医療の状態とその特徴について検討してきた。だが史資料は限定され、自ずと限界があった。本研究では、京都大学東南アジア研究所図書室の史資料を閲覧・収集し、活用することで、仏領期インドシナ全域(とりわけ現ベトナム地域)における精神保健医療がどのように展開してきたか、カンボジアの視点から明らかにする。

詳細

本研究課題における目的は、仏領期インドシナにおける精神保健医療の実態について、史資料を基に実証的に、カンボジアの視点から明らかにする事である。仏領期カンボジアの医学・医療全般についての研究(Guillou 2009; Oversen and Trankell 2010)が近年展開されている。これら先行研究によれば、仏領期カンボジアでは、公衆衛生の改善、感染症対策、医療施設・医療教育の整備等が、住民を教化するという使命のもとで行われた。

研究の意義は、あくまで視点はカンボジアにありながら、仏領インドシナ全域との関わりの中で、より詳細にそして立体的に、精神保健医療がどのような社会機能を持っていたのか実証することにある。植民地化される過程で、被植民側の逸脱者の管理が問題となる。仏領カンボジアでは、非理性的な精神病患者を正常人や犯罪者から選別することを主たる目的として、当時の精神保健医療が導入されたと、これまでの史資料の分析から申請者は考えている。

期待される成果はふたつある。1)仏植民地研究において、仏領期インドシナと例えば仏領期マグレブ(Keller 2007)の精神保健医療のあり方を比較、検討できる点にある。つまり同時代における別地域での比較が可能になる。2)申請者の博士論文「精神疾患概念をめぐる人類学─カンボジア精神保健医療の変遷─」に関わるが、精神疾患がもつ概念および精神保健医療の社会機能等について、本研究課題では仏領期が対象であるように、時代の移り変わりの中に位置づけられる点である。

 


タクマウ精神科病院の外観(『Cambodge Sangkum Reaster Niyum Sante Publique』より)

カンボジア官報