I-1.「東南アジアにおける自然の商品化再考」(平成28-29年度 FY2016-2017 継続)


  • 研究代表者:生方史数(岡山大学・大学院環境生命科学研究科)
  • 共同研究者:百村帝彦(九州大学・熱帯農学研究センター)
  •                      内藤大輔(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  •                      鮫島弘光(地球環境戦略研究機関)
  •                      Truong Quang Hoang(フエ農林大学・ベトナム中部農村開発センター)
  •                      小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)

研究概要

本研究では、東南アジアにおいて自然がどのように商品化されてきたかを、資本化、金融化、新自由主義化といった理論・実態両面における近年の新たな傾向をふまえながら、エージェントの作用に着目して批判的に再検討する。これによって、人間と自然を媒介する社会制度や技術の影響を、東南アジアの地域的な文脈の中で描き出すことをめざしたい。なお、当該テーマに関する現地研究者とのネットワークを構築するため、研究代表者がバンコク連絡事務所に2017年7~9 月の間滞在することを予定している。

詳細

東南アジアでは、古くから豊富な天然資源が取引され、社会変容や国民経済の形成に大きな影響を与えてきた。例えば、鉱物や石油、木材や林産物は、植民地期以降の東南アジア諸地域において国家戦略上重要な天然資源であり、森林・土地制度や国営採掘企業に代表されるような多くの制度枠組みを創出してきた。ゴムやアブラヤシなどのプランテーション産業は、グローバル経済のなかで、現在でも多くの地元住民をその商品連鎖に巻き込みながら発展を続けている。さらに最近では、環境問題や貧困対策に関するグローバルな議論の影響を受け、環境認証制度や炭素クレジットといった新たな自然の商品化の枠組みが形成されつつある。

これまで、多くの東南アジア地域研究者が、天然資源採掘や商品作物栽培が社会文化・政治経済・自然環境に与えたインパクトという形で関連研究を行ってきた。しかし、これらと上述の「新たな商品化」の傾向を結び付けるような研究はまだ多いとはいえない。ゆえに本研究では、「新たな商品化」の事例を既存研究と比較しながら、東南アジアにおける自然の商品化のプロセスを、商品化を推進する(あるいは商品化に抵抗する)エージェントの作用に着目して批判的に再検討する。

以上の活動によって、東南アジアにおける自然と人間の関係性の変容に関する歴史的理解を深めると同時に、自然と人間を媒介する制度や科学技術の役割を地域的な文脈の中で明らかにすることができると考える。

 


デジタル化された自然。自然は支払いを受けるためにオフィスで評価され、カテゴライズされる(ベトナム・フエ)。

支払いの現場。オフィスの中で決まった自然への評価に戸惑う現場(ベトナム・フエ)