IV-5.「マルク紛争とその和解に関する人文社会科学的総合研究」(平成28-29年度 FY2016-2017 継続)


  • 研究代表者:河野佳春(弓削商船高等専門学校・総合教育科)
  • 共同研究者:岡本正明(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  •                      小池 誠(桃山学院大学・国際教養学部)
  •                      佐伯奈津子(名古屋学院大学・国際文化学部)
  •                      鈴木隆史(桃山学院大学・国際教養学部)
  •                      長津一史(東洋大学・社会学部)
  •                      西 芳実(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  •                      間瀬朋子(南山大学・外国語学部)
  •                      山口裕子(北九州市立大学・文学部)

研究概要

本研究はマルク紛争とその和解を、インドネシア各地の紛争や世界的イスラム過激派運動の中に位置づけつつ、地域の歴史・伝統文化に基づいて分析する。そのため地域文化や地域史、インドネシア各地の紛争、紛争の中核的担い手とされる「やくざ」組織、紛争に関わったと非難される在蘭のマルク系亡命者、マルクに到来する出稼ぎや移民、インドネシア人の国際ネットワーク、それぞれに詳しい研究者の学際的共同作業を行う。

詳細

本研究は、1999 年から数年間、民主化とそれへの抵抗、宗教対立、地域内の伝統的社会経済関係、移民と出稼ぎを通じた地域間関係、国際的にエスカレートするイスラム過激派運動など、多様な要素の複合として展開し、多大な被害をもたらしたマルク紛争を総合的に理解し、かつまたそれによって、インドネシア各地で並行した多数の類似紛争を、アンボン・ポソを焦点とするひとまとまりのものとして検討する試みである。

当該紛争について従来多くの研究・報道がなされたが、このような多様性を包括総合し、インドネシアにおける宗教対立、イスラム・キリスト両宗教国際ネットワークと結びつけて、その実態および原因・背景を、実証的に分析した研究は存在しない。本研究は、過去現在における同地域の政治情勢不安定化の構造を解明し、和解促進・紛争抑止に貢献する。

本研究では予算的時間的制約ゆえ新資料・新事実の発見は期待できないが、多様な研究者の協力によって、既存の膨大な記録(新聞・Web 上の伝聞・体験記など一般書)を精査し、正確詳細かつ総合的な紛争・和解の理解が達成できる。

 


アンボン島北岸ママラ村のモスク前広場、立派な観覧席はレバランに行われる隣村モレラと共同の箒合戦の為。箒合戦は伝統的地域統合の象徴とされ、紛争期間も地域内外から多数の観客が集まった。

箒合戦の箒