VI-2. 「『メー・ナーク』:現代タイの仏教観と女性像を体現するオペラ・ヒロイン」(平成29年度 FY2017)


  • 研究代表者:川本佳苗(龍谷大学・大学院文学研究科)

研究概要

「メー・ナーク・プラカノーン」はタイで映画やドラマとして親しまれている怪談である。本研究では、ソムタウ・スッチャリッタグン作オペラ戯曲『メー・ナーク』(2003 年)が描く特徴を分析する。従来の物語で強調されてきた仏教と精霊信仰・女性性の優劣を指摘する先行研究や、論拠とされる仏教文献の調査に基づき、ソムタウが現代的・現実的なタイ女性像を描きながらもタイの仏教信仰を反映した作品を創造したことを明らかにする。

研究目的

1) タイ人が実際にナークに抱く親愛と畏敬にも関わらず、僧侶(仏教)が幽霊(精霊信仰)を成敗するという対立や優劣が展開した過程を明らかにする。その結果を、そのような展開が生じる原因となった近・現代タイの社会の理解に役立てる。

2) ソムタウが現実的・現代的な女性としてナークを描きつつも、タイ仏教の思想を反映したオペラ作品を創造したことを明らかにする。その結果として、ソムタウの解釈を現代タイの女性観や仏教信仰の理解に役立てる。

意義

1) ナークの物語における仏教思想の影響を、仏教文献研究と現代のタイ地域研究との学際的な調査によって明らかにする点。

2) オペラ『メー・ナーク』におけるナークと夫マークの肯定的な愛の描かれ方は、現代的な新解釈のように見えて本質的に仏教思想に根ざしていることを明らかにする点。

3) ナークの物語がオペラという西洋芸術の形式で表現されたことで、タイ社会の一つの文化的成熟を示す点。

期待される成果

本研究は、日本語と英語の二言語で積極的に発表するため、国内外でタイの伝承・民話に関心を持つ者にインパクトを与える。また、ナークの物語の中で最も研究されてきた映画『ナン・ナーク』以降の作品である戯曲を研究することは、ナーク像の変容を理解する上で役立つ。戯曲は、仏教民話・怪談・オペラといった多様な要素を含むため、本研究は、文化人類学・地域研究・仏教学・音楽研究・ホラー作品研究等の様々な分野に新たな知見を提供できる。

 


オペラ『メー・ナーク』より、ナークとマーク

オペラ『メー・ナーク』作曲者・ソムタウ・スッチャリッタグン

オペラ『メー・ナーク』より