I-1. 「インドネシアにおける伝統的金採掘時の水銀使用による環境汚染と健康被害からの持続的回復」(平成29-30年度 FY2017-2018 継続)


  • 研究代表者:髙樋さち子(秋田大学・教育文化学部)
  • 共同研究者:岡本正明(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 濱田文男(秋田大学・名誉教授)
  • 上田晴彦(秋田大学・教育文化学部)
  • 王 効挙(埼玉県環境科学国際研究センター・自然環境部)
  • Irfan D.Prijambada(ガジャマダ大学・農学部)
  • Himawan Tori Bayu Murti Petrus(ガジャマダ大学・工学部)
  • Ardiana Ekawant(マタラム大学・医学部)
  • I. Gede. Putu. Wirawan(ウダヤナ大学・農学部)
  • 趙 鉄軍(新潟食料農業大学・食料産業学部)

研究概要

本研究の目的は、持続可能な地域社会を形成するために伝統的金採掘時の水銀被害を回避することである。

第1 に、安心安全な生活を営むため、伝統的金採掘時の水銀による健康被害を回避するためのシステムを立案する。具体的には現地診療所、病院における水銀による乳幼児の健康被害の調査をもとに水銀による被害の拡大を阻止するための方策を考察する。

第2 に、水銀を使用しない金採掘方法と植生利用による汚染された環境資源の浄化・修復方法の研究を行う。

詳細

2015 年現在日本政府は水俣病の教訓を踏まえ「水銀に関する水俣条約」にもとづき、水銀のライフサイクル全体のリスク管理を目的とした「地球環境ファシリティ(GEF:Global Environmental Facility)」と協働し、開発途上国の条約実施への支援を実施している。特に「アジア太平洋水銀モニタリングネットワーク(APMMN:Asia-Pacific Mercury Monitoring Network)」や「水銀マイナスプログラム(MINAS:MOYAI Initiative for Networking Assessment and Strengthening)」はアジアの開発途上国におけるGEF を支援をしている。本研究はこのMINAS に従い、インドネシア国内の多くの地域が直面している水銀問題に着目し、水銀利用の削減、健康被害の回避と汚染された環境の回復策を研究するものである。

本研究の目的は次の4 点である。1)伝統的金採掘現場の住民の水銀による健康被害の回避、2)水銀を利用しない金採掘手法の開発、3)水銀で汚染された環境資源の浄化・修復技術、4)安心安全な生活の形成。

国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)によると、2011 年の世界の大気中への水銀排出量は推定1,921t であり、このうち伝統的小規模金採掘において排出される水銀が全体の37%と最も多くを占めている。この開発途上国で行われている伝統的金抽出法で使用されているアマルガムの中に75%が含まれ、残り25%が排水と残鉱中に含まれる。本研究は水銀を使用しない技術の開発と運用により伝統的金採掘時の水銀総排出量の削減に貢献することができる。

本研究から期待される成果は、以下の通り。
1)水銀による健康被害の回避──近年の、金採掘地域での異常な乳幼児の出生率(5%)、また増加している流産数を減少できる。
2)水銀による環境汚染の回復技術策── “Low Cost, Low Technology,Low Risk” を基礎としたファイトレメディエーションによる汚染土壌、廃水中の水銀の除去と回収ができる。
3) 1)と2)から将来において安心安全な生活を営むことが可能な社会を形成できる。


Borax 法による金粒子の蛍光X 線分析
使用機器:EDX 付走査電子顕微鏡(日本電㈱製 JSM-6010LA)

Borax 法の実験