III-1. 「Ronald Renardコレクションの保存整理と、その分析を通した東南アジア大陸部の民族と宗教文献に関する史資料の基礎研究」(平成29-30年度 FY2017-2018 継続)


  • 研究代表者:田崎郁子(大谷大学・真宗総合研究所東京分室)
  • 共同研究者:速水洋子(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 和田理寛(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • Nittayaporn Prompanya(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • Anchalee Singhanetra-Renard(フリーランス研究者)
  • Pisith Nasee(チェンマイ大学・社会科学部)

研究概要

本研究は、タイをはじめとする東南アジア大陸部少数民族及び山地開発研究で著名な故R. Renard 氏コレクション及びチェンマイ周辺の各大学・研究機関所蔵の史資料を整理・分類し、東南アジア大陸部の民族と宗教に関する文献解題目録を作成するとともに、R. Renard 氏コレクションの一部を東南アジア地域研究研究所(以下、東南研)図書室に招来し、当該資料を活用した日本国内における東南アジア大陸部の民族・宗教研究の新たな展開に貢献する。

詳細

本研究の目的は、第一に、タイとミャンマーを中心とする東南アジア大陸部全域の民族関連文献やキリスト教宣教活動報告等多岐にわたる稀少資料を含んだ故Ronald Duane Renard 氏(1947-2014)の個人コレクションを整理・分類し解題書誌情報を作成することによって当該地域の民族・宗教研究の概況を明らかにすることである。第二に、このR. Renard 氏旧蔵書の一部を東南研図書室に招来し、日本国内における東南アジア大陸部の民族・宗教研究を推進することである。

初年度である昨年度は、遺族が所有していた文献のタイトルを基にして4,201 冊のコレクションの簡易分類を行った。内訳は、少数民族関連が708 冊、キリスト教65 冊、仏教527 冊、北タイ753 冊、カレン語・ビルマ語文献約100 冊、その他2,148 冊となっており、少数民族、キリスト教関連文献約800 冊を東南研図書室に招来した。また、コレクションの中には、スゴーカレン語の月刊誌『モーニングスター』の1850 年7 月の号も含まれており、管見の限りではこの号はレナード氏所蔵のものが世界で初めて現存が確認されたものである。

本年度は、こういった希少文献に留意しながら、さらにカレン語・ビルマ語文献約100 冊および仏教関連文献の招来と、招来した全ての文献に関してその整理分類と解題書誌情報の作成を進めていく。解題書誌情報を元に、東南研図書室、チェンマイ大学図書館、パーヤップ大学公文書館などの所蔵と比較対照し、貴重な資料を洗い出してコレクションの価値や意義を明確にするとともに、東南研図書室で「東南研レナード・コレクション」として一般にも利用可能な形で公開する。さらに、コレクションを用いて、キリスト教やカレン研究、北タイ研究、山地少数民族研究として、メンバーが各自の論文執筆に活用していく。


モーニング・スター1850 年7 月号
モーニングスターは、1840 年代後半からスゴーカレン語で出版された月刊誌です。キリスト教徒カレンを中心として、当時の宣教の様子などが示されており、貴重な現地語史料となっています。現在このモーニングスターを最もまとめてウェブ公開しているのは、アメリカのジョージア州にあるMercer Universityというバプテスト系の大学のAmerican Baptist Historical Societyという公文書館ですが、そこでもこの写真にある1850 年7 月の号は公開しておらず、管見の限りこの号はレナード氏所蔵のものが初めてです。

昨年度(2017 年度)のIPCR 予算によって東南研に招来したレナード氏所蔵の書籍