IV-7.「グローバル化時代のアジアにおける君主制」(平成29-30年度 FY2017-2018 継続)


  • 研究代表者:櫻田智恵(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • 共同研究者:日向伸介(大阪大学・大学院言語文化研究科)
  • 玉田芳史(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 藤倉達郎(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • 坂川直也(フリーランス研究者)

研究概要

東南アジアのタイとカンボジア、南アジアのネパールを主たる対象として、君主制の比較研究を行う。ネパールの君主制は廃止になり、カンボジアでは権威は大きくないものの存続してきた。タイは、君主制が強大な権威を有してきたが、前国王の崩御により今後の動向に注目が集まっている。君主制を廃止、もしくは存続させる要因は何か。状況の異なる3 カ国の事例を比較し、分析する。また本年は、特に日本やヨーロッパの皇室・王室との比較を重点的に行う。

本研究では、君主制を単に国内事情から分析するだけでなく、グローバル化の下で変化する国際情勢の影響も視野に入れつつ、現代君主制の存在意義を明らかにすることを目指す。

詳細

本研究は、アジアの君主制に焦点をあて、現代君主制の存続要因を明らかにすることを目的とし、すでに君主制が廃絶された南アジアのネパールと、現在も君主制が力を持つ東南アジアのタイ、カンボジアの三国を主たる対象として比較研究を行う。

アジアに残る君主制は多くない。列強が植民地支配を進める過程で、その多くを廃絶に追い込んだからである。植民地時代を生き延びた君主制も、決して安泰なわけではない。デモクラシーの発展に伴い、現代君主制の存在意義は揺らぎつつあるからである。では、こうした状況下で、今もなお君主制が存続し続ける、もしくは廃絶される要因は何か。そうした両者の違いはなぜ生まれるのか。

本研究で扱う、タイ、カンボジア、ネパールはいずれも、国政選挙が実施される一定程度民主化が進んだ君主国である。こうした共通要因にもかかわらず、君主制の政治的な役割や重要性は異なる。この違いが生まれるのは、君主制や代議制民主主義と一口にいっても、その展開や実態には各国ごとに違いがあるからである。本研究は、各国ごとの特色を浮かび上がらせ、各国への理解の深まりに寄与することが期待される。

また、デモクラシーと君主制の関係性については、ヨーロッパ諸国の君主制研究においても、近年注目されつつあるテーマである。

二年目である本年は、昨年の成果をアジア以外の地域、特に日本とヨーロッパと比較することに重点を置く。アジアの君主制についての比較研究は乏しく、各国の事例を挙げるにとどまってきたが、本研究はメディアなどの働きに着目し、君主制の受容基盤が如何に醸成されたかという点から他地域比較を行う先駆的なものである。


タイの前国王の肖像が描かれた小学校の塀

2017 年のタイ前国王の火葬式用特設会場