I-2.「東南アジア大陸部稲作経済の新展開:タイにおける日本米と香り米の栽培・商品化」(平成30-令和1年度 FY2018-2019 継続)


  • 研究代表者:宮田敏之(東京外国語大学・大学院総合国際学研究院)
  • 共同研究者:Pannee Bualek(チャンガセーム・ラーチャパット大学・研究開発研究所)
  • Supunnee Pladsrichuay(チャンガセーム・ラーチャパット大学・人文社会学部)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)

研究概要

東南アジア大陸部における稲作経済の新展開を、日本米と香り米の栽培・商品化に焦点をあて研究する。特に、高収量・低価格の稲作から低収量・高価格品種の稲作への転換という視点から実証的に研究する。高価格で取引される日本米と香り米の栽培は拡大傾向にあり、量から質への転換に着目する。本研究では、日本米は、チャオプラヤー川流域のタイ中部ナコンサワン県チュムセーン郡およびベトナム南部(アンザン省)、香り米は、ムーン川流域のタイ東北部ローイエット県ガセートウィサイ郡における栽培拡大と商業化の取り組みとその課題を、地域の農業開拓史を踏まえ、農家、農協、精米所など生産地の主要アクターに着目して研究する。バンコク連絡事務所に2019 年7 月から9 月まで駐在し、タイ・日本の共同研究者と共同調査を行う。

詳細

タイでは2011 年に発足したインラック政権の籾米担保政策の影響で、2014 年以降、米価が低迷した。そうした中、高価格で取引される日本米や香り米の栽培と流通が従来にも増して拡大しつつある。いわば、稲作における量から質への転換が進行している。そこで、本研究は、ナコンサワン県チュムセーン郡およびベトナム南部アンザン省の日本米栽培地とローイエット県ガセートウィサイ郡の香り米栽培地において、日本米及び香り米の種籾の調達、栽培管理、籾米販売、精米、白米販売の過程を明らかにし、栽培の拡大・商品化の進展、並びにその課題を実証的に明らかにすることを目的とする。

先進国はもとより、アジア新興国の所得の向上や食生活の変化により、インドシナ半島で栽培される日本米や香り米に対する需要は増加しており、高収量・低価格の稲作から、低収量・高価格品種の日本米や香り米の稲作への転換、いわば量から質への転換が進行しつつある。この転換に着目した実証的な研究は、従来のインドシナ稲作に関する研究にはなく、本研究の研究史上の意義は大きい。

日本米及び香り米栽培拡大による量から質への稲作の転換が、農民の生活、農協や精米所の経営のあり方にどのような変化をもたらしているのかを明らかにする。そのプラスの側面のみならず、その転換の中に潜むリスクや課題も浮き彫りにできると考えられる。同時に、本研究は、東南アジア稲作の新展開を総合的に研究していくための日本とタイの研究ネットワークの強化に大いに資する。

 


タイ東北部ジャスミン・ライスの栽培地(タイ・ローイエット県)

タイ東北部ジャスミンライスのブランド化と商品化(タイ・ローイエット県)