I-3.「東南アジア大陸部における発酵食文化の位置づけに関する総合的・通地域的研究」(令和1年度 FY2019 新規)


  • 研究代表者:横山 智(名古屋大学・大学院環境学研究科)
  • 共同研究者:藤本 武(富山大学・人文学部)
  • 森永由紀(明治大学・商学部)
  • 中川智行(岐阜大学・応用生物科学部)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 山本宗立(鹿児島大学・国際島嶼教育研究センター)
  • 山﨑寿美子(愛国学園大学・人間文化学部)
  • 佐々木綾子(日本大学・生物資源科学部)
  • 砂野 唯(名古屋大学・生命農学研究科)

研究概要

東南アジア大陸部では、様々な発酵食品が食べられているが、それらがそれぞれの地域もしくは各民族における伝統的な食文化において、どのように位置づけられるのか、十分な検討はなされていない。本研究は、専門分野を超えた総合的視点、かつ東南アジア地域外との比較を通じた通地域的視点から、東南アジアの発酵食品が地域・民族の伝統食の中でいかに位置づけられているのかを解明する。ついては、共同研究メンバーの山本宗立が、2020 年後期(10〜12 月を予定)に東南アジア地域研究研究所バンコク連絡事務所に駐在し、東南アジアの発酵食品に関する情報を収集する。

詳細

東南アジア大陸部において、乳酸発酵させた魚、野菜、豚肉は、定番のおかずである。そして、低地では魚醤や小エビペースト、また山地では納豆のような発酵調味料が料理の味付けに使われる。彼らが呑む酒も発酵によるものである。発酵食品は、東南アジア大陸部の食文化に完全に埋め込まれているかのように思われるが、管見の限り、伝統食における発酵食品の位置づけについては、全く研究がなされていない。そこで本研究では、地域の自然環境、微生物、生業、民族の食の嗜好性など、文理融合的な視点から考察し、東南アジア各地で広く見られる発酵食品が各地域もしくは各民族における伝統食の中で、いかに位置づけられているのかを東南アジア大陸部以外の食文化とも比較しつつ明らかにすることを目的とする。

発酵食品には、社会的役割を担うもの、食糧保存技術として成立したもの、うま味調味料として利用されるものなど、多種多様である。それは、地域における発酵食品の位置づけも、極めて多様であることを表している。伝統食文化がユネスコ無形文化遺産に登録される今日、地域の食文化が色濃く残る発酵食品に着目した研究は、地域研究と食文化研究の両方の進展にとって重要な意義を有する。

総合的・通地域的視点で実施する本研究の成果は、地域研究、地理学、人類学、農学、微生物学の学問分野に対して、食文化研究に対する関心を高め、これらの学問分野を繋ぐ新たな研究領域を提案することが期待できる。

 


ミャンマー・シャン州のパオの人々がつくる納豆「べーセィン」

タイ・ナコーンパノム県のカーの人々がつくる塩辛ペースト「プララー」