II-2.「東南アジア農山漁村における生態資源利用の歴史的展開と今日的意義―カンボジア・ポーサットにおける事例研究―」(令和1年度 FY2019 新規)


  • 研究代表者:百村帝彦(九州大学・熱帯農学研究センター)
  • 共同研究者:矢倉研二郎(阪南大学・経済学部)
  • 本間香貴(東北大学・大学院農学研究科)
  • 星川圭介(富山県立大学・工学部)
  • 堀 美菜(高知大学・教育研究部総合科学系)
  • 河野泰之(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • KC Krishna Bahadur(ゲルフ大学・地理学科)
  • Hor Sanara(カンボジア王立農業大学・土地管理学部)

研究概要

本研究の目的は、東南アジアの農山漁村における多様な生態資源の利用とその変容とその意義を、カンボジアのポーサット州を事例として、明らかにすることである。これまで同地域の農山漁村で生態資源と生業の調査をした経験を持つ日本人研究者に加えて、2020 年6〜8 月までの3 カ月間、ゲルフ大学のシニアリサーチャー、KC Krishna Bahadur 氏を東南アジア地域研究研究所へ招へいする。本研究の成果は、Krishna 氏の参加を含む共同研究会を開催するとともに、メンバー分担による商業出版書籍への執筆、およびメンバーによる『東南アジア研究』、Southeast Asian Studies などへの投稿論文によって公開する。

詳細

本研究は、東南アジアの農山漁村において、多様な生態資源の利用と、人々の暮らしがどのように変容してきたのかを明らかにするとともに、異なる農業生態環境の間でヒトの動き、モノの流通、経済の動向がどのような関係にあったのかを明らかにすることを目的とする。

研究方法は、ポーサット州において内水面域、低地、丘陵地、山地それぞれで現地調査の経験をもつ研究者を集めて、共同研究会を実施する。それにより、各農業生態環境における生態資源の利用および生業の変容に関する考察を進め、研究論文として公表する。

本研究は、多様な農業生態環境が連続的に展開する一地域の全体を視野におさめながら、各地の生態資源利用を分析し、特にその変容を駆動するヒト、モノ、カネの動態とその相互関係を総合的に考察することで、生態資源利用研究に一つの新しいモデルを提出する。また、本研究がテーマとする生態資源の歴史的な利用とその「変容」は、東南アジア農村地域の変容の全体に関わったものであり、その成果は東南アジア農山漁村社会一般の理解の深化に大きく寄与する。

カンボジアでは、1990 年代初頭まで内戦の影響が大きかったため、近代化およびグローバル化に起因する農村社会の変動が2000 年代以降を中心とした約20 年間に「圧縮」した形で進んだ。またポーサット州は、内水面、低地、丘陵、山地という多様な生態環境が「凝縮」されており、これらをパノラマとして一望することができる。

 


ポーサット州内の村落での聞き取り

ポーサット州の丘陵地に広がる商品作物