IV-12.「人間の回復と地域社会の再生のための開発実践考:フィリピン・ ダバオ市の有機農園を対象とした予備的考察」(令和1年度 FY2019 新規)


  • 研究代表者:青山和佳(東京大学・東洋文化研究所)
  • 共同研究者:中西 徹(東京大学・大学院総合文化研究科)
  • 岸 健太(秋田公立美術大学・大学院複合芸術研究科)
  • 藤岡 洋(東京大学・東洋文化研究所)
  • 文 景楠(東北学院大学・教養学部)
  • 清水 展(関西大学・政策創造学部)
  • Mario Lopez(京都大学・東南アジア地域研究研究所)

研究概要

本共同研究は、地域研究の経験を共有する人文社会科学系の研究者および表現者(アーティスト、デジタルアーカイブ研究者)の共同により、有機農業が人間の福祉と地域社会の再生に対してもつ意味を探るものである。2 年後の科研費応募をめざし、フィリピン、ダバオ市における有機農園を参照事例としつつ、参加者各自による文献・関連資料の渉猟および全員による討論を行い、有機農業の収益性、社会関係や農民文化への影響を実証的に検証する枠組みを模索する。

詳細

本研究の目的は、「発展途上国」における低所得層の状況を理解するための分析枠組みを提示し、それを踏まえて、彼らの生存戦略の一つとなる代替的な「共生」モデルを、小規模かつ農家個別の営みとして捉えられてきた有機農業をもとに提案することである。このことは、グローバル化に伴う市場経済拡大のなかで彼らが直面している、貧困線以下の生活水準からは脱出したが社会関係が脆弱化しているという問題を考える糸口になるという意義をもつ。そのために共同研究者は、文献渉猟と討論を通じて、既往の研究では強調されなかった有機農業の収益性、社会関係の深化、農民文化の再生といった論点を検討する。並行して、別途予算でフィリピン、ダバオ市の有機農園をフィールドワークし参照事例を提供する。

期待される成果、効果はつぎの通りである。第一に、「有機農業をめぐる規範的・実証的議論」の確認である。基本的な文献の内容を確認し、グローバルサウス、東南アジア、フィリピンに応用できる論点と改めて付け足すべき論点を整理した上で、新しい仮説を提示すること。第二に、ダバオ市でのフィールドワークを通してその仮説に対する予備的検証を行い、その結果を開示すること。第三に、上記の研究プロセスを丁寧に行い開示することで、「厚い記述」に支えられた「スローな」地域研究という方法論を再考し、その意味を「地域研究者」に問いかけること。

 


ダバオ市の有機農園を訪問

ダバオ市の有機農園のバイオガス生産