IV-7 .「ブータン王国におけるGNH政策に沿ったNCD予防介入:ブータン王国政府データ解析を通して」(平成30-令和1年度 FY2018-2019 継続)


  • 研究代表者:今中雄一(京都大学・大学院医学研究科)
  • 共同研究者:瀬川裕美(京都大学・大学院医学研究科)
  • 坂本龍太(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • Sonia Pilar Suguimoto Watanabe(京都大学・医学教育センター)
  • Chencho Dorji(ブータン医科大学・医学部)
  • Sither Dorji(ブータン医科大学・医学部)
  • Pemba Yangchen(ブータン保健省・公衆衛生部門)
  • Kunzang Dorji(ブータン医科大学・公衆衛生学科)
  • Ugyen Wandhi(ブータン医科大学・公衆衛生学科)
  • Chimi Dema(ブータン保健省・ランゲトゥン病院)
  • Yankha Dorji(ブータン保健省・プンツォリン病院)
  • Sonam Zangmo(ブータン保健省・ゲレフ病院)

研究概要

ブータン政府の有する4 種類の大規模データ(2017 年国勢調査データ、2015 年生活習慣病調査データ、2015 年国民幸福度調査データ、2017 年国民生活基礎調査データ)を、用いて以下の解析を行い、ブータンと討議・考察する。1)健康と幸福に関する国内格差に影響を及ぼす要因を多変量解析にて探索する。2)幸福感と主観的健康観に健康がどの程度寄与しているのか、どのような背景要因が関連しているのかを多変量解析にて探索する。生活習慣病調査を利用し、3)住民の塩分過剰摂取による健康リスクに関する知識・認識と実際の塩分摂取量の差異を比較し、4)高血圧群の中で医療者にフォローを受けている群と受けていない群の社会文化背景要因の差を多変量解析にて探索する。

詳細

健康は幸福の重要な要因であることは明白である。しかし、健康を守るためにどの程度の投資を行い、どのような行動変容が必要であるのか、さらにその行動変容過程が人々の幸福にどのような影響を与えるのかは明らかではない。本研究はブータン王国において幸福の価値観、生活習慣病予防の実態及び社会的コストを質的量的両側面より分析し、人々の幸福と健康に貢献することが目的である。ブータン王国では、国民総幸福量(GNH)を国家の政治理念としている。国民総幸福量(GNH)政策は、「持続可能で公平な社会経済開発」「環境保護」「文化の推進」「良き統治」の4 つの柱で構成されており、国連が目標に掲げる「持続可能な開発」に先駆けた政策でもある。国民総幸福量という理想的概念に基づき、限られた資源下において生活習慣病予防を検討することは、途上国のみならず先進国の健康政策にも示唆を与えることができる。

生活習慣病予防は、介護予防にも深く関連しており、医療費の抑制にもつながる。しかしながら、多くの途上国は感染症対策や母子保健政策などには取り組んでいるが、生活習慣病予防対策は取り組み始めたばかりであり、評価指標は確立されていない。また、“ 生活習慣” は人々の生活様式・社会的背景・文化・歴史政治など多くの要因に影響を受けている。“ 幸福” との関連の中で、生活習慣が幸福にどのように寄与しているのかを、地域差や文化背景なども検討した上で、幸福を目標にした生活習慣病対策の検討を行うことは意義深い新たな取り組みである。

 


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