VI-1.「ミャンマー人女性の越境結婚における民族的・文化的要素について」(令和1年度 FY2019 新規)


  • 研究代表者:翟 亜蕾(京都大学・大学院経済学研究科)

研究概要

本研究は、ミャンマー・シャン州から中国雲南省の国境地帯に越境するミャンマー人女性の越境結婚に着目し、両国の越境共通民族が混在する農村結婚市場を対象に、フィールド調査を通じて得られる量的・質的データを援用しつつ、ミャンマー人女性移民が中国人男性と結婚する意思決定における民族的・文化的要素を中心に、越境結婚のメカニズムについて実証研究を行なう。

詳細

中国へ嫁ぐミャンマー人女性が、2000 年以後急速に増加している。この背景には中国経済の急上昇、並びに中国の人口政策(「一人っ子政策」)とその裏返しとしての嫁不足など、需要側の要因が影響している[Das Gupta et al. 2010; Li et al. 2011]。しかし、供給側にある女性自身が越境結婚といった意思決定をする際に、需要側が主導する経済的な理由以外に、どんな要素が重要視されるのかについての研究が皆無に近い。

上記の課題を遂行するために、古くから越境共通民族と異文化の共存する中国雲南省徳宏州(Dehong)の国境地域に着目し、そこで急増するミャンマー人女性移民の中国人男性と結婚する動機の民族的・文化的要素、さらに越境結婚のメカニズムについて実証研究を行なう。とりわけ、異国籍・同民族、異国籍・異民族選好の行動を説明する決定的な文化的要素は何であるかを究明したうえで、異なる民族間の選好行動の違いについて解釈を与える。

本研究は、越境結婚する女性の意思決定における民族的・文化的要素について、現地調査から収集できる量的・質的データの分析を通して究明できる。また、中国・ミャンマー国境地帯における越境結婚のメカニズムが把握できるのみならず、その成果は、これまで主に受入れ政策をめぐって展開されてきた移民研究に新たな視点を提供することが期待される。さらに、中国・ミャンマー国境を跨って形成される新しい民族間関係がより鮮明に浮かび上がることが期待される。

参考文献
Das Gupta, M.; Ebenstein, A.; and Sharygin, E. J. 2010. China’s Marriage Market and Upcoming Challenges for Elderly Men. World Bank Policy Research Working Paper 5351.
Li, H.; Yi, J.; and Zhang, J. 2011. Estimating the Effect of the One-child Policy on the Sex Ratio Imbalance in China: Identification Based on the Difference-in-differences. Demography 48(4): 1535–1557.

 


中国雲南省徳宏州のタイ族の村で暮らすミャンマー人嫁

中国雲南省徳宏州の村で働く日雇いミャンマー人出稼ぎ労働者