I-3. 「タイの博物館からみた国家像と国民像──マイノリティに着目する」(令和2年度 FY2020 新規)


  • 研究代表者:Piyada Chonlaworn(天理大学・国際学部)
  • 共同研究者:小泉順子(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • Taweeluck Pollachom(ワライラック大学・言語教養学部)
  • 日向伸介(大阪大学・大学院言語文化研究科)
  • Thamwongsa Pattayaraj(国立発見博物館・学術開発科)

研究概要

タイには 45 カ所の国立博物館と約 1,000 カ所の私立と地域の博物館がある。 従来タイでは国の歴史や国家的英雄を展示する博物館が主であったが、この40年間、庶民や民族的・政治的・性的マイノリティを展示の中心とする地域レベルの民間や市立博物館が増えてきた。

本研究は、これらの博物館がどのように一般庶民とマイノリティを展示しているのかに着目し、国立博物館の展示と比較しつつ、その国家像と国民像を分析し、地域社会との相互作用を考える。また情報化時代のなかで小規模の博物館の役割と運営がいかに変化し、これからどう変わるべきかを様々な観点から考える一助としたい。

詳細

本研究は、タイの博物館の展示にみる国民認識を分析するものである。タイには 1,000 カ所以上の博物館があり、設立の形態により国立、市立、地域コミュニティ、及び民間の博物館に分けられる。本研究はその中でも一般庶民と民族的・政治的マイノリティを展示する博物館に着目し、その展示を考察する。

研究対象とする博物館は、①冷戦期に弾圧された反体制派の記念館、②19世紀後半から20世紀初頭にタイに流入した中国系に関する博物館、③女性と労働者に関する博物館、④地域コミュニティ博物館である。

これらの博物館を国立や中央の博物館と比較することにより、タイにおいてマイノリティがどのように「国民」へと包含、あるいは排除され、いかにその位置づけに対応、あるいは対抗してきたかが見えてくると期待される。また情報化時代のなかで、これらの博物館がどのように SNS 等を通じて展示し集客しているのか、役割を果たしていくべきかも検討する機会としたい。

本研究のオリジナリティは、民間及び地域レベルの博物館に焦点を当て、マイノリティがどのように語られ、自己主張してきたのかを検討することにあり、それによって国立博物館の公的な歴史展示からは見えてこない対社会の側面が明らかになると期待される。さらに地方の博物館関係者のインタビューによって小規模博物館を支える仕組みと運営の現状も把握し、タイにおける博物館の発展や展開にも寄与することをめざしたい。

 


友誼村地道・タイ・ヤラ県べトン市のマラヤ共産党基地、1976 年建設。(ピヤダー撮影)

イゴー文化・歴史資料館・タイ南部ナラティワート県、2012 年建設(Taweeluck Pholchom 撮影)