II-1. 「東南アジア農山漁村における生態資源利用の歴史的展開と今日的意義──カンボジア・ポーサットにおける事例研究」(令和2年度 FY2020 新規)


  • 研究代表者:百村帝彦(九州大学・熱帯農学研究センター)
  • 共同研究者:矢倉研二郎(阪南大学・経済学部)
  • 本間香貴(東北大学・大学院農学研究科)
  • 星川圭介(富山県立大学・工学部)
  • 堀 美菜(高知大学・教育研究部総合科学系)
  • 河野泰之(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • KC Krishana Bahadur(ゲルフ大学・地理学科)
  • Hor Sanara(カンボジア王立農業大学・土地管理学部)

研究概要

本研究の目的は、東南アジアの農山漁村における多様な生態資源の利用とその変容とそれらの意義を、カンボジアのポーサット州を事例として、明らかにすることである。メンバーは、同地域での農山漁村で生態資源と生業の調査をした経験を持つ日本人研究者とゲルフ大学(カナダ)の Krishana Bahadur からなる。 プロジェクト2年目に Krishana 氏の京都招聘を予定していたが、コロナ感染拡大のため断念する。 代わりに、オンラインでの研究会を開催し、議論を深めその成果を取りまとめる。 具体的には、メンバー分担による商業出版書籍執筆および『 東南アジア研究 』への論文投稿を進める。

詳細

本研究は、東南アジアの農山漁村において、多様な生態資源の利用と、人々の暮らしがどのように変容してきたのかを、カンボジアのポーサット州を事例地域として検討する。そしてそこから、異なる農業生態環境の間でヒトの動き、モノの流通、経済の動向がどのような関係にあったのかを明らかにすることを目的とする。

カンボジアでは、1990 年代初頭まで内戦の影響が大きかったため、近代化およびグローバル化に起因する農村社会の変動が 2000 年代以降を中心とした約 20 年間に「圧縮」した形で進んだ。なかでもポーサット州は、内水面、低地、丘陵、山地という多様な生態環境が「凝縮」されており、これらをパノラマとして一望することができる。

共同研究者はみな、ポーサット州の内水面域、低地、丘陵地、山地それぞれで現地調査の経験をもつ。今年度はオンライン研究会を開催し、各農業生態環境における生態資源の利用および生業の変容に関してメンバー間で意見交換を進める。

本研究の特徴は、多様な農業生態環境が連続的に展開する一地域の全体を視野におさめながら、各地の生態資源利用を分析し、特にその変容を駆動するヒト、モノ、カネの動態とその相互関係を総合的に考察することにある。また、本研究がテーマとする生態資源の歴史的な利用とその「変容」は、東南アジア農村地域の変容の全体に関わったものであり、その成果は東南アジア農山漁村社会一般の理解の深化に大きく寄与する。最終的には、生態資源利用研究に一つの新しいモデルを提出することも目標としたい。

 


トウモロコシの皮むき作業

モザイク状に広がるポーサットの農業景観