IV-13. 「タイ残留日本人のライフヒストリーからみる日タイ関係の戦後史──ビジュアルアーカイブと聞き取り調査等による複合的研究」(令和2年度 FY2020 新規)


  • 研究代表者:直井里予(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 共同研究者:遠藤 環(埼玉大学・大学院人文社会科学研究科)
  • 王 柳蘭(同志社大学・グローバル地域文化学部)
  • 小泉順子(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 櫻田智恵(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • 佐治 史(公益財団法人リバーフロント研究所)
  • 野中章弘(早稲田大学・教育学部 総合科学学術院)
  • 平松秀樹(京都大学・東南アジア地域研究研究所)

研究概要

本研究の目的は、タイ残留日本人のライフヒストリーを中心に据えて、社会経済、政治、歴史、文化の多様な文脈に位置づけながら考察し、両国の戦後社会とその変容も踏まえて、日タイ関係を新たな視角から捉えることである。戦後における日タイ関係の歴史的形成過程を立体的に描き出すために、インタビュー(聞き取り調査)と彼ら自身が保持する写真および当時の映画(ビジュアルアーカイブ)や新聞、公文書などを使用する。

詳細

本研究の目的は、これまで殆ど詳らかにされることのなかったタイ残留日本人(戦前・戦中にタイに渡り、あるいはタイで生まれ育ち、戦後タイに残り、今もタイに暮らす人々)の戦中・戦後の経験をライフヒストリーの聞き取り調査による証言及び映像や写真などのビジュアルデータ、そして公文書など様々な資料をもとに考察することで、日タイ関係を多面的に明らかにすることである。タイ残留日本人は、戦後 70 年以上の歳月の中で、どのように日常生活を送り、人々の関係性(家族間、タイ人、日本人同士間、日本人以外の人々との間、世代間)を形成したのか?タイ研究における各分野の専門家による調査と分析により戦時中は同盟国であり戦後も日本と独特の友好関係を維持してきた日タイ関係の別側面を、政治、経済、歴史の文脈から明らかにする。

本研究は、歴史に埋もれて殆ど知られることのなかったこのタイ残留日本人の経験を記録し、太平洋戦争および戦後タイ社会(および日本社会)研究に新たな視点をもたらすものであり、高い意義をもつ。これらの戦中・戦後のビジュアルデータや文献をまとめ、タイ残留日本人の実像と、彼らが捉えたタイ社会や日タイ関係を、歴史的背景とともに、次世代の人々へ伝えることには、意義がある。

残留日本人をめぐる生活世界と経験を、専門分野が違うタイ研究者たちが多様な視点から共同で研究を行うことで、従来のタイ研究(特に日タイ関係研究)に新たな視座をもたらすと考える。また、文章のみならずドキュメンタリー映画上映を含めた発信は、多様な対話(議論)を通した新たな価値の創出と公共空間の生成に貢献することが期待される。

 


プロジェクト HP の作成

オンラインによるドキュメンタリー映画の上映(映画のワンシーン)