IV-2. 「近代東南アジアの社会経済的変容とコミュニケーション技術の発展」(令和1-2年度 FY2019-2020 継続)


  • 研究代表者:柿崎一郎(横浜市立大学・国際教養学部)
  • 共同研究者:池田昌弘(岡山商科大学・経済学部)
  • 太田 淳(慶応義塾大学・経済学部)
  • 小林篤史(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 城山智子(東京大学・大学院経済学研究科)
  • 杉原 薫(総合地球環境学研究所・研究部)
  • 多賀良寛(慶応義塾大学・言語文化研究所)
  • 西村雄志(関西大学・経済学部)
  • 宮田敏之(東京外国語大学・総合国際学研究院)

研究概要

本研究では 19 世紀から 20 世紀前半までの東南アジアにおける社会経済の変容をコミュニケーション技術の発展という側面から検証する。 現在コミュニケー ションという語はもっぱら情報の伝達の意味で用いられているが、当時は広く人、モノ、情報の伝達手段、すなわち交通・通信という意味で解釈されていた。 いわゆる産業革命によって生み出された新たなコミュニケーション技術、すなわち蒸気船、蒸気機関車、電信・電話などがこの時期に東南アジアに流入してくることで、東南アジアの社会経済がどのような変化を見せたのかを包括的に分析する。

詳細

本研究は 19 世紀から 20 世紀前半までの東南アジアにおける社会経済の変容とコミュニケーション技術の発展との関係性を包括的に分析することを目的とする。19 世紀に入って蒸気船、鉄道、電信と様々なコミュニケーション技術が東南アジアに導入され、域内外を結ぶネットワークが構築されてきた。このような新たなコミュニケーション技術の導入が、東南アジアにおける人、モノ、情報の流動の変化にどのようにインパクトを与えたのかを解明する。

本研究の意義はコミュニケーション技術の発展という視角から東南アジアの社会経済的変容をとらえなおす点にある。先行研究では必ずしもコミュニケーション技術の発展を念頭に置いて議論が行われているわけではなく、双方の関係性があいまいである場合が多いことから、従来通説としてとらえられてきた様々な事象の背後に存在していた、コミュニケーション技術の発展の重要性を提示できるものと考えられる。

現在は高速道路、高速鉄道、携帯電話、インターネット、スマートフォンといった新たなコミュニケーション技術革新が急速に進む、いわば第2次コミュニケーション革命の時期である。このため、第 1 次コミュニケーション革命とも言える当時の東南アジアがコミュニケーション技術をどのように活用したのかを解明することで、現在におけるコミュニケーション技術革新が社会経済に与えうる影響に示唆を与えることが期待される。

 


バッタンバンからの米輸送のために建設されたカンボジア鉄道の起点プノンペン駅 (2016 年)
出所:柿崎一郎(Ichiro Kakizaki)

現在は道路橋として使用されている、建設途上で中止された初のラオスへの鉄道・ タンアップ~ターケーク線の橋梁(ターケーク付近)(2011 年)
出所:柿崎一郎(Ichiro Kakizaki)