IV-8. 「東-東南アジアにおける世界農業遺産登録地域の生態学的および歴史的な特性に関する比較研究──国家・市場経済・生態系」(令和1-2年度 FY2019-2020 継続)


  • 研究代表者:内藤直樹(徳島大学・大学院社会産業理工学研究部)
  • 共同研究者:石川 登(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 片岡 樹(京都大学・大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
  • 岩佐光広(高知大学・人文社会学部)
  • 田中 求(高知大学・地域協働学部)
  • 増田和也(高知大学・農林海洋科学部)

研究概要

本研究の目的は、近世以降の東−東南アジア地域における国家的なもの・市場経済・生態系の絡まり合いが地域のユニークな農業システムの創出とどの程度関連しているのかについて比較考察することにある。そのために、これらの地域の世界農業遺産(Globally Important Agricultural Heritage Systems:GIAHS)関連サイトを構成する農業システムが創造された生態学的および歴史的な文脈を明らかにして、その特徴を比較する。それは農業システムをインターフェイスにした国家・市場・環境の交渉史/誌を明らかにすることでもある。

詳細

本研究の目的は、東-東南アジア地域GIAHSサイトを構成する農業システムが創造された生態学的および歴史的な文脈を明らかにすることを通じて、国家的なもの・市場経済・生態系の絡まり合いが地域のユニークな農業システムの創出とどの程度関連しているのかについて考察することにある。

そのために、これまで徳島県西部(日本)の世界農業遺産登録・保全・活動に関する実践人類学的な研究をおこなってきた研究代表者を中心とする東-東南アジア地域の農村研究者を結集し、「ある地域固有の農業システム」と見做されてきたものが、いかに国家的なものや市場経済そして生態系と農民の交渉およびそれらの絡まり合いのなかで創出されているのかを明らかにする。

本共同研究の意義は3つある。1)ある地域(生態系)のユニークな生業システムが創出される機序を、国家や市場経済との関連性のなかに位置づけて比較検討する視座の構想、2)GIAHS サイトが世界でもっとも多いアジア地域を対象にした GIAHS サイトに関する政治/歴史生態学的な比較研究の実施、3)GIAHSのような国際社会による運動に対する文化人類学的な介入方法の検討。 そして、これらをおこなうことで、文化人類学的な知見をもとに公共的な課題に向き合う方法論を構築するという意義がある。

さまざまな GIAHSサイトにおける農業システム成立の機序を、おもに人文─社会科学的な視点から比較検討することを通じて、生業経済と市場経済、国家的なものと非国家的なもの、そして人間と環境の相克や絡まり合いのなかで農業システムおよび生態系が成立しているという視点を提出することができる。これは 1)非人間中心主義的な視点から人間─環境関係に関する根源的な再考をおこなおうとしている人新世に関する議論にGIAHSの事例から論点を提出できる可能性をもつだけでなく、2)人文─社会科学系の視点や方法論を環境保全や食糧安全保障をめぐる国際的な運動に関連づけるためにも重要である。

 


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