IV-10.「東南アジアにおける乳児の投棄に影響を与える要因の調査」(令和3年度 FY2021 新規)


  • 研究代表者:河野文子(京都大学・大学院医学研究科)
  • 共同研究者:Maznah Dahlui(マラヤ大学・医学部)
  • Nik Daliana Nik Farid(マラヤ大学・医学部)
  • Nyoman Anita Damayanti(アイルランガ大学・公衆衛生学部)
  • Sri Adiningsih(インドネシア児童保護団体)
  • Siyan Yi(シンガポール国立大学・公衆衛生学部)
  • Chhoun Pheak(KHANA)
  • 坂本龍太(京都大学・東南アジア地域研究研究所)

研究概要

東南アジアで報告されている乳児の投棄(baby dumping)は、発生件数の増加と共に、各国で社会問題として認識され始めている。本研究では、乳児の投棄を、妊娠中の母親またはその家族が出産直後に乳児を捨てる行為と定義する。多くの場合、母親は妊娠の事実を隠したいと考えており、出産前のケアのために医療機関を訪れていない事が多く、医療提供者の立ち会いなしに密かに出産が行われる。妊娠中の女性が乳児を捨てることに何が影響しているのかを示す信頼できる学術研究はまだ多くない。本研究の目的は、東南アジアでの妊娠中の母親の出産後の乳児の投棄を決定するのに影響を与えると考えられる要因を明らかにすることである。研究デザインとして、スコーピングレビュー、質的研究、アンケート調査、ケーススタディ等の調査方法を使用して実施する。

詳細

研究目的
1) 東南アジア(インドネシア、マレーシア、カンボジア)の妊婦による出産後の乳児の投棄につながる影響要因を調査する。
2) 東南アジア各国の市民が乳児の投棄の現象をどう認識し、乳児の投棄の概念が、どのように社会的に構築されているかを学術的に明らかにする。

乳児の投棄は、ニュースとしての事例の報告が、東南アジア各国で近年増えてきているが、学術的にはまだ研究結果はあまり発表されていない。乳児の投棄という課題がセンシティブな課題である為、赤ちゃんを捨ててしまった妊婦にアクセスすることは困難である。社会、宗教、文化的な構造や変化が、東南アジア全体での乳児の投棄の現実をどのように形作っているのかを明らかにする必要がある。妊婦が出産した乳児の投棄を選択する(または選択を余儀なくされる)ことに影響を与える要因を調査し、研究結果を、東南アジア各国の社会に調和した、乳児の投棄の削減に向けた社会政策や実施戦略の立案に貢献できればと考える。

本研究では、乳児の投棄の発生に影響を与えると考えられているさまざまな要因を見つける予定である。研究の結果は、スコーピングレビューおよび質的研究において、重要なキーワードまたはテーマの形で要約される。アンケート研究では、研究結果は、特定の変数(要因)と乳児の投棄の発生との関連についての、東南アジア各国の中・高校生の認識について理解を深め、将来の研究に役立つ可能性のある変数として要約される。質的研究では、実際に起こった乳児の投棄の事例の経験を、母親や関係者の視点から語ってもらうことによって、乳児の投棄の体験や考えを記述する。

 


マレーシア王立警察の乳児投棄事案の担当官を訪問