IV-11.「東南アジア研究におけるデジタルトランスフォーメーションの活用──デジタル金融包摂に焦点を当てて」(令和3年度 FY2021 新規)


  • 研究代表者:芦 宛雪(立命館大学・国際関係学部)
  • 共同研究者:三重野文晴(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • 岩下直行(京都大学・公共政策大学院)
  • 濱田美紀(アジア経済研究所・ 開発研究センター)
  • 井手上和代(明治学院大学・国際学部)
  • Cao Nguyet Thi Khanh(関西学院大学・経済学部)

研究概要

本研究は、近年東南アジア諸国の金融セクターにおけるデジタル金融サービスの急速的な展開による変革を、デジタル金融包摂の視点から捉える。東南アジア諸国の比較研究を通じ、デジタル金融サービスの展開を把握しながら、デジタル融資が低所得者及び零細・小規模事業主に対する経済影響を分析し、デジタル金融サービスの高い潜在力を持続的に活かすため、直面した諸課題・困難を考察し提示することを目的とする。

詳細

近年東南アジア地域において、モバイルマネーやオンラインバンキングやフィンテックサービズなどに代表されるデジタル金融サービスが、高い注目を浴びてきた。特に、コロナ後、その利用が加速し、金融サービスのデジタル化傾向の定着が示されている。フィンテック企業がユーザーデータの蓄積と信用度分析の新手法の開発により、デジタル決済サービスからデジタル融資へと進化し、経済活動に対する効果が期待される一方、デジタルインフラの利用平等性やデジタル技術関連のリスクなど、規制・監督機関に対し今迄ない新たな課題も数多く浮き彫りになった。

本研究は、主として東南アジア諸国における低所得者及び零細・小規模事業主の立場から、デジタルインフラの利用における不平等性及び、金融リテラシー・デジタルリテラシー向上の課題を探る一方、途上国の製造業小規模事業主に対するデジタル融資による経営上の変化及び効果を分析し、従来の中長期資金調達といった難点が改善されるかについて検討し、デジタル金融サービスにおける諸課題を考察し提示することを目的とする。

本研究により、デジタル金融による新たな研究領域における各種情報の収集を目指し、デジタル技術・金融技術の急速な進化が各国の金融規制当局に与えた課題、金融インフラ利用における平等性の改善、フィンテックの競争環境の促進などの課題を明確にし、報告書でまとめた上で、将来の研究プロジェクトの形成を目指す。

 


アジア金融センターであるシンガポールの金融街

国内デジタルバンキング市場規模の4 割を占め、タイ銀行大手のカシコン銀行