IV-1.「パラミリタリー組織の人権侵害に対する監視メカニズム」(令和2-3年度 FY2020-2021 継続)


  • 研究代表者:木場紗綾(公立小松大学・国際文化交流学部)
  • 共同研究者:Pavin Chachavalpongpun(京都大学・東南アジア地域研究研究所)
  • Paul Chambers(ナレスワン大学・政治学部)
  • Rosalie Arcala Hall(フィリピン大学ビサヤ校・社会科学部)
  • 安富 淳(叡啓大学・ソーシャルシステムデザイン学部)
  • Beni Sukadis(インドネシア防衛戦略研究研究所)
  • Srisompob Jitpiromsri(プリンスオブソンクラ大学・政治学部)

研究概要

本研究では、1)パラミリタリーの及ぼす治安上の脅威は何か、2)東南アジア諸国の治安部門(主に軍・警察)は、パラミリタリー組織による人権侵害をどのように定義し、どのようなコントロール・処罰・予防のための策を講じてきたのか、行政府や議会、市民社会がパラミリタリーを監視できないのはなぜか、3)他国のどのような理論が援用可能か、という問いを設定し、比較研究を実施する。パラミリタリーとは、法令に定められ(statutory)、国家の治安機構を下支えする民間の組織を指す。東南アジアでは伝統的に、国境警備隊/沿岸警備隊、憲兵、情報機関部隊、民兵などが、正規軍や警察の役割を補完してきた。

フィリピン、インドネシア、タイの 3 カ国を対象とし、それぞれの国を専門とする研究者の間で、オンラインによる研究会、可能な限りにおいて自国内での現地調査、文献収集を行い、知見を共有する。

詳細

本研究の目的は、パラミリタリー組織の適切な監視メカニズムのあり方を分析・検討することであり、以下の3 つの問いを立てている。

1) パラミリタリーの及ぼす治安上の脅威は何か
2) 東南アジア諸国の治安部門(主に軍・警察)は、パラミリタリー組織による人権侵害をどのように定義し、どのようなコントロール・処罰・予防のための策を講じてきたのか。また、行政府や議会、市民社会がパラミリタリーを監視できないのはなぜか
3) 他国・他地域のどのような理論やモデル(特に民間軍事会社の監視に関する欧米の理論)が援用可能か

本研究は、1)パラミリタリーを含む国家/非国家の治安部人権侵害とそれに対する監視・制裁・告発メカニズムに関する制度の調査、2)類似の文脈として、欧米や南米の民間軍事会社の監視に関する先行研究の調査、3)対象3 カ国における事例研究(主に軍・警察およびNGO へのインタビュー)、の3 つの方法をとる。

1 年目は、基礎文献と資料を分析し、「グレーゾーン」としてこれまで見過ごされてきたパラミリタリーへの適切な監視メカニズムに関する理論的枠組を分析した。

2 年目は、対象とする3 カ国の制度と事例について、公開情報を調査し、年3 回のセミナーを京都大学にて実施する。さらに、同分野に知見を有する東南アジアからの専門家をリソースパーソンとして、オンライン会議などで意見交換を行う。それらを基に論文を執筆する。

 


2021 年7 月22 日、欧州軍事社会学会(エストニア・タルトゥ大学とオンラインとのハイブリッドで開催)で報告するプロジェクトメンバー

2021 年10 月12 日、国際軍事科学学会(カナダ王立軍事大学とオンラインとのハイブリッドで開催)で報告するプロジェクトメンバー