IV-9.「泥炭荒廃地における援助と住民組織化に関する基礎的研究」(令和3年度 FY2021 新規)


  • 研究代表者:細淵倫子(立教大学・グローバル都市研究所)
  • 共同研究者:Almasdi Syahza(リアウ大学・地域連携研究所)
  • Suwondo(リアウ大学・教育学部)
  • Besri Nasrul(リアウ大学・大学院農学研究科)
  • 甲山 治(京都大学・東南アジア地域研究研究所)

研究概要

本研究はインドネシアの 4 州(リアウ州、リアウ諸島州、中央カリマンタン州、パプア州)にある熱帯泥炭荒廃地における、1)援助が住民に与える影響と、2)自然・経済・政治・社会的影響を比較することで、適切な支援の指標を構築することを目的としている。さらには地域自治の実態に即した、住民組織の在り方について検討する。これらの試みを通して、熱帯泥炭荒廃地における持続可能な住民組織モデルを提案し、実践モデルだけでなく、理論的分析を含んだ研究となることを目指す。

また、本研究会は、行政職員、専門家、研究者、企業、実践者、住民から構成され、メンバー間の協働を促進し、マルチディシプリナリー・モデルを採用することで、その発展の可能性を探る。

詳細

本研究はインドネシア、熱帯泥炭荒廃地における自然・農業・土地利用・経済・政治・社会を理解した、「適切な」住民組織を構築するための分析枠組みを提示すること目的としている。自然への配慮、経済の維持をふまえた、「負担にならない」「依存しない」援助の在り方を模索することで、熱帯泥炭荒廃地における持続可能な住民組織モデルの類型化及び地域モデルの確立を目指す。

本研究の意義は、インドネシアの熱帯泥炭荒廃地における持続可能な住民組織モデルの類型化及び地域モデルの確立という点である。具体的に言うと、1)住民生活史(移住の口述、土地利用の変遷、生業とリスクヘッジ、村落コミュニティの変容)の記述、2)ここ20 年間行われてきた、企業と住民、企業とNGO との対立構造の解明、3)自然資源・人的資源・社会資本をめぐる紛争事例のメカニズムの分析、4)泥炭地開発手法を基にした継続可能な形でのコミュニティ・モデルの提示、そして、5)コミュニティが主体的に、かつ長期的に継続することができる環境づくりの提案である。

初年度の計画では、継続して中カリマンタン州 パランカラヤ市とパプア州 マラウケ市のフィールドワークを予定していた。だが、今年度も続くコロナの影響により長距離の移動が効率的ではないことを加味し、本年度はリアウ州およびリアウ諸島州に調査地を絞り絞り、フィールドワークを継続する。また、初年度は熱帯泥炭荒廃地の乾燥地域に着目して調査をしたため、本年度は湿地地域での調査を行う。なお、Zoom による研究会を月2 回行い、 3 カ月に1 回調査報告会を計画している。最終年度となる今年度は2022 年2 月に提案のモデルを学ぶワークショップを実施する予定である。

本研究は、インドネシアの熱帯泥炭荒廃地の実態把握や援助の効果について、住民組織の短期的観察だけでなく、既存研究が看過してきた側面(気候変動、炭素、水位、土壌、規則、土地利用、農業、林業、紛争、国際ネットワーク等)にも着目しながら解明することで、70 年代から続く日本での研究実績を現代の視点で解明することができるといえよう。熱帯泥炭湿地および乾燥地における自然・農業・土地利用・経済・政治・社会をふまえた、住民組織の構築とそれを支える制度や仕組みを解明することで、東南アジアにおける熱帯泥炭地の住民組織の多様性について理解を深めつつ、東南アジアを越えた熱帯泥炭地の住民の組織化に関する理論的理解を得ることも期待される。

 


雨季を考慮した小規模農家の農業対策

熱帯泥炭湿地の家屋と生活