VI-6.「幸福観と健康観の文化的差異についての文献検討──医療保健福祉の資源配分との関連も含めた考察」(令和3年度 FY2021 新規)


  • 研究代表者:瀬川裕美(京都大学・こころの未来研究センター)

研究概要

本研究の目的は健康観と幸福観の文化的差異を医療資源配分の視点から文献検討することである。とりわけ国民総幸福量(Gross-National-Happiness)政策にて注目されているブータン王国、国民皆保険制度を持たない民主主義国家であるアメリカ合衆国と自国である日本に注目し文献検討を行う。

研究方法は、主に文献検討とする。ブータン王国及び日本でのフィールド調査や地域保健に関わる実務経験を通して得られた視点や文化的差異について、文献検討を行うことでさらに深める。とりわけ歴史的背景や政治的背景、地勢的な側面から、現在の健康観や幸福観と医療保健福祉の資源配分についての関連についても考察する。

詳細

本研究の目的は、健康観と幸福観の文化的差異を医療資源配分の視点から文献検討することである。特に医療保健福祉政策を検討する際には、個人の幸福と社会全体の幸福、個人の健康と社会全体の健康についての価値観が非常に重要となる。

幸福感と主観的健康観は関連があるとされているが、どのように関連しているのか、その主観性に影響を与える要因は何なのかを歴史的背景や地勢的背景、政治的背景などの文化的差異に注目し文献検討を行う。さらに医療保健福祉の資源配分や地域つくりの視点からも検討することが目的である。これまでも幸福観や健康観については、心理学・社会学・文化人類学など多くの分野で研究が積み上げられているが、健康観との関連やその医療保健福祉資源配分にまで考察を深めたものは少ない。本研究課題の独自性は、これまでの幸福観に関わる先行研究や論考を健康観や医療保健福祉の資源配分の視点から再考することである。

人間社会として、国家として、地域社会として、個人として、人々の幸福と健康を目指すということに、反対する人は少ないだろうが、具体的な道筋は示されていない。本研究により、より深く各国の特性を捉え人々のウェルビーイング(幸福)につながる医療保健福祉政策の一助となることが意義として期待される。

 


参考文献の一部

京都大学に向かう途中の鴨川