IV-5.「農村社会構造の広域アジア間比較──地域社会と国家権力、開発政策の相互規定性」(平成22-23年度 FY2010-2011 継続)


  • 研究代表者:柳澤雅之(京都大学・地域研究統合情報センター)
  • 共同研究者:松本武祝(東京大学・大学院農学生命科学研究科)
  • 樋渡雅人(北海道大学・大学院経済学研究科)
  • 大鎌邦雄(東北大学・名誉教授)
  • 坂下明彦(北海道大学・北方生物圏フィールド科学センター)
  • 厳 善平(同志社大学・グローバル・スタディーズ研究科)
  • 大野昭彦(青山学院大学・国際政治経済学部)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア研究所)
  • 生方史数(岡山大学・大学院環境学研究科)
  • 水野広祐(京都大学・東南アジア研究所)
  • 加治佐 敬(財団法人国際開発高等教育機構)
  • 藤田幸一(京都大学・東南アジア研究所)

研究概要

広域アジアの農村社会構造を比較する視点として、1)地方行政の人的配置、2)地方政府における直接税の課税対象と徴税方法、3)小規模インフラ整備の主体、4)インフォーマル金融、とりわけ頼母子講などの集団的金融および親戚・友人間の金融、5)フォーマル金融の配分・返済方式等に着目し、それぞれの担当地域ないし担当国での現状を整理し、あわせて「農村社会構造」についての研究レビューを報告する。

詳細

アジアの農村社会は、多様な「原型」を基盤としつつ、近年の経済発展に伴い、大きな変動を経験している。東アジアでは、近世に成立した「小農社会」(小農による強固な村コミュニティ)が原型となり、それが勤労精神や企業内組織の在り方にまで影響し、地域固有の発展パターンを生み出してきた。南アジアでは、「原型」としてのカーストに基づく職分制社会が、近年の都市化・工業化の中でその帰趨が注目されている。また東南アジアは、両文明圏のはざまにあって、小人口社会に特徴的なオープンな農村社会を形成してきたが、近年の地方分権化等、新しい動きの中でコミュニティ機能に一定の変質がみられる。以上のような、それぞれに個性をもつアジアの農村社会は、都市化・工業化、急速に進む少子高齢化といった、かなり共通の現代的課題に直面している。2 年目の本年度は、「原型」としての農村社会構造の解明を目的として、上述した5 つに主な焦点をあて、必要に応じて、地域ごとにトピックを設定する。これにより、アジア農村比較社会論を打ち立てることを試みる。


ベトナム紅河デルタ村落では、村人の持つネットワークが村の個性を形作るため、隣り合う村ごとに生業が異なることもしばしば起きる。写真は、コックタイン合作社がコネを利用し、中央や地方の研究機関に属する研究者やデルタ各地の流通関係者を招待してジャガイモ・ワークショップを開催した時のもの(2008年5月)

南インドの灌漑用ため池。シーズン前でまだ水がほとんどない。