V-1.「東・東南アジアにおけるポップカルチャー」(平成23年度 FY2011 新規)


  • 研究代表者:Nissim Otmazgin(エルサレムのヘブライ大学)

研究概要

本書は、近年東アジア・東南アジアにおいてポップカルチャーの制作をめぐって生じている地域システムを、最新の共同制作や市場形成における協力体制の展開から検証する。その対象は、映画、音楽、コミック、アニメーションなどの文化商品である。各章は、日本、中国、韓国、フィリピン、インドネシアの文化産業を対象にし、東・東南アジアにおけるポップカルチャー市場が、もはや各国の自律的な国家経済に立脚するのではなく、地域システムにおける制作へと大きな変化を遂げていることを明らかにする。このシステムでは、商品の制作、分配、消費は、地域レベルで行われている。本書はさらに個別の事例研究を超えて、文化的想像物の生産や利用を、文化商品や文化イメージの濃密なサーキュレーションの中で理解することにより、文化を超えた制作体制がもたらす地域経済の潜在的可能性について考察する機会ともなっている。

詳細

東・東南アジアにおけるポップカルチャーの研究の大半は、文化的プロダクトをテキストとして理解し解釈することに専念してきた。それは、ポップカルチャーの実践と意味について重要な情報を提供してきた。しかし、東・東南アジアにおけるポップカルチャー市場の近年のドラマチックな変化にもかかわらず、こうした文化的多様性の組織化については注目されてこなかった。文化産業において今日顕著な共同制作やそれに基づく市場のメカニズム、そしてそれらが持つ意味について研究対象としてほとんど顧みられてこなかった。

本書は、こうした既存の研究の限界を超え、東・東南アジアにおける共同制作・コラボレーションの実証研究を行い、文化産業と地域の複雑な相互関係を分析するための地域的枠組みを提示する。

本書の貴重な貢献は、以下のようなものである。第一に、共同制作の事例を記述・記録した初めてのコレクションである。したがって、これまでほとんど研究対象とされてこなかったパターンやプロセスに切り込む研究である。第二に、本書は共同制作・コラボレーションが行われる多様な事例を扱う。これにより共同制作パターンやコラボレーションが行われるコンテンツについての多様性を提示する。第三に、本書は、政治学、人類学、経済学、社会学、メディア研究、カルチュラル・スタディーズといった多分野の研究者によるコレクションである。それにより、コラボレーションの研究における多分野的アプローチの有効性について論じることができる。


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