I-2. 「居住区分類に基づいたジャカルタ大都市圏における建造環境の構造分析」(平成24-25年度 FY2012-2013 継続)


  • 研究代表者:林 憲吾(総合地球環境学研究所・研究部)
  • 共同研究者:村松 伸(総合地球環境学研究所・研究部)
  • 三村 豊(総合地球環境学研究所・研究部)
  • 水野広祐(京都大学・東南アジア研究所)

研究概要

ジャカルタ大都市圏の建造環境の空間構造を明らかにする。ジャカルタ市ならびに周辺の各行政区で土地利用データなどの収集を行い、商業、工業、居住など、機能別に建造環境の空間分布を描く。さらに、大都市圏全体の居住エリアを、物理的指標に基づいて複数のタイプの居住区へと類型化し、各居住区別に都市化のプロセスの違いと空間分布を明らかにする。それをもとに、今後の都市化の傾向を考察する。

共同研究者との短期での現地調査数回と、研究代表者による平成25 年度7、8、9 月の3 カ月間のジャカルタ連絡事務所長期滞在によって、フィールド調査、データ収集を進める。

詳細

本研究は、東南アジアで最も人口集積が大きいメガシティであるジャカルタ大都市圏(ジャボデタベック)を対象として、その都市景観の大部分を占める住宅や商業施設、インフラといった建造環境の空間的構造を明らかにすることを目的とする。とりわけ、独立以後から現在にわたって急増してきた人口が、どのように都市に定着したかを、彼らの居住環境の変遷に焦点を当てて分析する。

具体的には、(1)ジャカルタ大都市圏レベルで土地利用データ収集および作成をおこない、建造環境の空間分布を住宅、商業施設、工場など機能別に描き出す。(2)居住エリアについては、住宅や街区組織の形状など物理的な特性の違いによって複数のタイプの居住区に分類し、それぞれの空間分布を作成する。(3)各居住区ごとに都市化の速度やライフスタイルを調査し、独立後に多様な居住環境が形成されていく過程を理解する。

東南アジアには人口1,000 万を超えるメガシティは複数あり、今後数十年は、さらなる人口増加が見込まれている。どの都市でも人工物の集積が著しく、中間層や富裕層をターゲットにした新興の住宅地開発は、従来の居住環境を大きく変えつつある。しかし、持続可能な都市の観点からは、都市が既に蓄積している環境や文化を生かした設計が不可欠である。したがって、既存の土地利用分類に加えて、複雑に変化する大都市の居住区を従前より高い解像度で分析することで、今後の都市化の行方を推察することだけでなく、持続可能な都市づくりに向けて、ローカルな建造環境や居住文化が持つ利点を提示することに貢献する。


ジャカルタの景観。低層の住宅地から高層のアパートメントまで、異なる種類の居住区で大都市が構成されている。

都心のカンポン(都市内集落)。狭い路地に住宅が密集し、多くの人口を吸収する。