II-2. 「弱者救済における地域観光の有効性に関する日タイ比較研究」(平成25年度 FY2013 新規)


  • 研究代表者:石井香世子(東洋英和女学院大学・国際社会学部)
  • 共同研究者:Kannapa Pongponrat(タマサート大学・イノベーション・カレッジ)
  • 速水洋子(京都大学・東南アジア研究所)

研究概要

本研究は、日本人研究者2 名とタイ人研究者1 名からなるグループで、タイと日本それぞれにおいて、津波被害後の観光活動が「弱者」(外国人労働者やマイノリティ労働者を含む)の復興と救済にどの程度役立ったのかを日本の事例を中心にタイに関する既存研究と比較する形で検証し、役立った部分についてはどのような条件下でそれが可能となるのかを考察する。

平成25 年度には(1)タイに関する先行研究のレビュー、(2)日本に関する先行研究のレビュー、(3)日本におけるプレ調査の実施を行う。26 年度には(1)日本での調査実施、(2)成果物としての論文執筆と投稿、(3)日本のワークショップでの成果発表を行う。

詳細

本研究では、タイと日本それぞれにおいて、日本とタイそれぞれの津波後の観光は、観光地帯で生活する出稼ぎ労働者やエスニック・マイノリティにどのような影響をもたらしているかを検討することを目的とする。

本共同研究の意義は、「弱者救済における地域観光の有効性」について、2 つの異なる文化や背景を持つ国々の事例を比較することから、より客観的で通用性の高い分析成果が期待されることにある。これまでも観光と弱者救済について検討する研究は多く存在したが、これを2 カ国間の比較分析という視点から実施した先行研究は管見の限り少ない。本研究は5 年来一緒に仕事をしてきた日本人研究者とタイ人研究者が比較分析を実施する点に、大きな意義を持っているだろう。

本調査研究では、(1)タイと日本それぞれにおいて、津波被害後の観光活動が「弱者」(外国人労働者や“ 異民族” 労働者を含む)の復興と救済にどの程度役立ったのかについて、宮城県気仙沼市とプーケットの比較研究という面から事例が提供される。(2)観光活動が「弱者」に役立った部分について、どのような条件下でそれが可能となるのかに関する分析結果が提示される。(3)「観光がローカルな弱者に恩恵を与えうるのか」という研究上の論題について、検討すべき新たな一側面からの研究事例が提供される、という3 つの新たな知見を、既存研究に加えることができるのではないかと期待される。


津波5 年後の観光地プーケットの海

津波5 年後の観光地プーケットの海