IV-1. 「文化遺産情報のシステム化とオントロジー構造による Local Knowledge の理解」 (平成24-25年度 FY2012-2013継続)


  • 研究代表者:津村宏臣(同志社大学・文化情報学部)
  • 共同研究者:柴山 守(京都大学・地域研究統合情報センター)
  • 小林 知(京都大学・東南アジア研究所)
  • 田代亜紀子(奈良文化財研究所・企画調整部)

研究概要

本研究では、11 世紀以降ベトナム諸王朝の中心都市でありつづけたハノイについて、その歴史都市景観に関する時空間的な情報基盤をSTISを基本とした時空間情報科学の方法と技術によって構築し、情報相互のオントロジー構造を基盤とした新しい文化景観研究を推進することを目的とする。昨年度実施した、国土座標系が不詳の現状の歴史地図類のアーカイブと補正を実施に追加し、累積する都市構造の時系列での変遷を定量的に評価、その傾向と法則性から歴史文化の理解を深める。

詳細

世界遺産として登録されているタンロン遺跡は、現在も発掘調査が継続的に進められており、関連する文献や古地図類の多様な情報も存在する。現状では、それらは有機的に結びついておらず、1 つの文化景観を紡ぎ出せていない。この研究では、発掘成果もあわせた多様な時空間情報を1 つの情報基盤(STIS: 津村研究室にて特許出願済み)に格納し建造物配置と都市構造の時系列変遷について明確にする。次いで、文献調査を実施し、併せて発掘調査成果からそれらの事実の確認を行い、その相互の関連を評価する。フランス統治下における都市計画と歴史景観を総合評価し、ハノイ都市形成史を考察することを目的とする。

昨年度は、ベトナムの国土情報基盤の混乱の改善のため、現地機関と連携し、空間情報拠点を計測し、この成果を報告した。また、研究者招聘には至らないものの、タンロンセンターにおいて若手研究者を対象としたGIS データ、技術に関連するセミナーを開催し、文化遺産情報のアーカイブに関する共通理解と共有化を深めた。

本研究の結果、(1)11 世紀から現代に至るまでの、ハノイの古地図・絵図・文献資料などに関する統合情報基盤が構築され、(2)公開可能なWebSTISの形で情報基盤をCSEASに構築することができる。これを利用して、単に地図を比較して質的情報の断続的変化によって歴史や景観を理解するだけでなく、(3)タンロン遺跡を中心とした歴史環境変遷について定量的な評価を実施し、(4)その歴史・文化的な背景について考察を可能とする。また、(5)新規の現地測量調査を実施することで、都市構造評価のための軸線評価を実施でき、結果として9 世紀以降の東アジア全体の都市形成史との比較文化研究に大いに資することが予測される。


モバイルGPS 較正キットによるタンロン城壁の測量

タンロン宮城測量基準点のGPSスタティック測位の講義