IV-4.「インドネシア泥炭火災由来の大気汚染物質が地域環境に及ぼす影響」(平成26-27年度 FY2014-2015 継続)


  • 研究代表者:奥村智憲(大阪府立環境農林水産総合研究所・環境科学センター)
  • 共同研究者:桑田幹哲(南洋理工大学・シンガポール地球観測所)
  • 伊藤雅之(京都大学・東南アジア研究所)
  • Haryono Setiyo Huboyo(Diponegoro大学・工学部)

研究概要

本研究は、インドネシア泥炭火災に伴って排出される有機系のガス状物質(VOCs)と微小粒子状物質(PM2.5)が周辺地域や地球環境に与える影響を明らかにすることを目的とする。具体的には泥炭火災近傍および周辺国(シンガポール)での VOCs、及び PM2.5の化学成分と濃度の観測により、それらの性状や発生量の推定を行う。本研究で得られるデータは将来的に煙害が越境汚染を経て気候変動や人の健康に与える影響を評価する上での基礎となる。

詳細

本研究の目的は、インドネシア泥炭火災に伴って排出される大気汚染物質の性状と周辺地域への越境汚染について発生源近傍と周辺国での観測を通して評価することである。インドネシアを中心とする熱帯泥炭湿地林の開発に伴う泥炭火災により放出されるPM2.5は全球のバイオマス燃焼由来PM2.5の約3割を占めるとされ、周辺住民への健康被害や空港の閉鎖、観光業への影響等を通じて東南アジア諸国に大きな経済影響を与える。またインドネシアの泥炭火災に伴って発生する温室効果ガスやPM2.5が気候変動に与える影響も懸念されており、地球温暖化緩和策とも連動した発生量削減方策の提言と実行が喫緊な状況にある。

本研究の意義は、泥炭火災由来のPM2.5及びVOCsの現場での大気観測に基づく研究が皆無に等しい現状に対して、それらの成分や発生量を精密な地上観測を通じて明らかにする点にある。

本研究で得られる観測データは、将来的に泥炭火災より発生するPM2.5やVOCsの排出インベントリを整備する上で不可欠なものとなる。すなわち、本研究により明らかにした大気汚染物質の性状や発生量と人工衛星等の観測から得られる燃焼量のデータを組み合わせることにより、各大気汚染物質の排出量を精密に推計することが可能となる。これは泥炭火災に伴って放出されるVOCsとPM2.5が地域環境や気候に及ぼす影響を数値モデルを用いて定量的に把握するための重要な基礎データとなる。


スマトラ島の泥炭火災現場

泥炭火災における揮発性有機化合物放出の野外調査