VI-5. 「カレン難民の移動をめぐるコミュニティ形成-ドキュメンタリー映画分析を伴う考察」(平成29年度 FY2017)


  • 研究代表者:直井里予(京都大学・東南アジア地域研究研究所)

研究概要

本研究の目的は、ミャンマー内戦の難を逃れて難民として生活するカレン難民の移動と定住をめぐるコミュニティ形成を、映像を用いて記録・分析することである。民に関する映画の分析を通して、ミャンマー・タイ国境(タイ側)の難民キャンプ及び、再定住第三国(アメリカ)におけるカレン人難民コミュニティ形成の詳細を明らかにする。映像ドキュメンタリー作家でもある申請者が、難民の日常生活における人々の関係性をテーマとしたドキュメンタリー映画を制作及び分析し、難民の社会の理解を進める。

研究目的

本研究の目的は、カレン難民の第三国定住地、またキャンプ閉鎖に伴う難民たちの新たな選択を通したコミュニティの形成過程を、映像を通して明らかにすることである。

研究主題を巡る課題は、以下の通りである。
1) タイ・ミャンマー国境:タイ北西部に位置し、約4 万人の難民が暮らすメラ難民キャンプ、及び帰還地のミャンマー国内において、カレン難民は、どうのように人々の関係性(家族間、カレン同士間、カレン以外の人々との間、世代間)を築きコミュニティを形成しているのか。

2) 第三国定住地:アメリカに移り住んだ難民たちは、自身と定住地社会との間で自らのアイデンティティにどのように折り合いをつけ、コミュニティを形成しているのか。

以上を進めるために、メラ難民キャンプで制作された作品やイギリスやオーストラリアなど第三国定住に渡ったカレン難民に関するドキュメンタリー映画などを貯蔵している山形ドキュメンタリーフィルムライブラリーにて、映像分析調査を行う。申請者は、カレン難民キャンプにおける日常生活及び社会関係に関する調査を2008 年から通時的に続けてきた。自身の映像とこれまでにタイ・ミャンマー国境の難民キャンプで制作されてきた映像作品の分析を合わせて、比較考察することで、難民の移動をめぐる関係性に関する分析を深める。

意義

難民キャンプは2020 年を目処に閉鎖が予定され、2016 年10 月から難民たちの帰還が始まった。従って、その社会様相や関係者の証言を記録した映像の収集、分析は、今後の地域研究・難民研究において貴重な資源となると考える。

期待される成果

映像は、文章では説明しきれない複雑な人間の行為(表情や音声)や文化の変容など、地域や文化の多様な現実と相関関係を伝え、複眼的な解釈を促すことができる。また、映画を通して社会に存在するさまざまな価値観を理解共有することにより、新たな関係性や学問上でのパラダイムを作ることが可能であり、カレンに限らず難民全体に関する議論に新しい視点をもたらすと考える。

 


メーラ(べグロ)難民キャンプ(約4 万人のミャンマー難民がキャンプで暮らしている)

映画の主人公のダラツー君は2013 年、アメリカに第三国定住し、いまはファイバーグラス工場で働いている。

サウスダコタ州へ第三国定住したダラツー君の家族